🧭 発達障害(ADHD・自閉スペクトラム症)

発達障害(ADHD・自閉スペクトラム症)について

発達障害(ADHD・自閉スペクトラム症)に関する記事(全3本)を1ページにまとめました。目次から気になる項目へジャンプできます。

このページでわかること

自閉スペクトラム症は対人関係やこだわりの特性、ADHDは不注意・多動性・衝動性を特徴とする発達障害で、いずれも生まれつきの脳の特性であり、育て方が原因ではありません。診断は精神科・心療内科で行われ、症状に応じた薬物療法に加えて、日常生活の工夫やスキルの習得を組み合わせることで暮らしやすさが変わります。学習や仕事の場面に関わる「ワーキングメモリー」の特性や、職場での環境調整・向いている仕事の選び方もあわせて紹介しています。

1. 自閉スペクトラム症について

1-1. 自閉スペクトラム症とは

自閉スペクトラム症は生まれつきの脳の発達特性で、対人関係の苦手さやこだわりの強さといった特徴があり、集団生活で特性が表れやすくなります。

自閉スペクトラム症は、発達障害の一つで、生まれつき脳機能の一部に発達の遅れや偏りがある疾患です。代表的な発達障害には、自閉スペクトラム症(以前はアスペルガー障害と呼ばれていました)やADHD(注意欠如・多動性障害)があります。

1-2. 特徴①「相手の気持ちが読めない」

場の空気や相手の意図を読み取ることが苦手で、一方的な会話になりやすいのが特徴です。

自閉スペクトラム症の代表的な特徴の一つが、社会性やコミュニケーションの障害と言われる「相手の気持ちが読めない」という特性です。会話をするとき、多くの人は無意識に相手の気持ちや表情を読み取り、それに合わせたやり取りをしますが、自閉スペクトラム症の方は「場の空気を読む」ことが苦手なため、自分の言いたいことを一方的に話したり、相手の意図をくみ取った会話がしづらかったりします。

1-3. 特徴②「こだわりが強い」

特定の物事へのこだわりが強い一方、興味のある分野では並外れた集中力や記憶力を発揮します。

もう一つの代表的な特徴が、強いこだわりです。想像することが苦手で相手の立場に立って考えることが難しく、特定の物事や手順にこだわって臨機応変な行動がとりにくい傾向があります。たとえば急に予定が変わると、この先どう展開するのか見通しが立たず気持ちが落ち着かなくなったり、ルールにこだわりすぎて必要以上に厳格になり、融通が利かなくなったりすることもあります。

1-4. 二次的なうつ・不安症状について

生きづらさからストレスを抱えやすく、うつや不安などの「二次障害」を伴うことが少なくありません。

自閉スペクトラム症の方は、コミュニケーションの障害やこだわりといった特性のために周囲になじめず、理由がわからないまま怒られるなど、生きづらさを感じやすい傾向があります。そのため日常生活でのストレスを抱えて自己評価が下がり、うつ症状や不安症状などのこころの不調を併発することがあり、これを「二次障害」と呼びます。

1-5. 診断と治療

診断は精神科・心療内科で行われ、根治薬はないものの、症状に応じた薬物療法と心理社会的治療を組み合わせて対応します。

診断は精神科や心療内科で行われます。特性についての聴取や幼少期の様子の問診に加え、知能検査や自閉スペクトラム症の程度を調べる心理検査を行って診断されます。自己評価だけでなく、養育者から聞く幼少期の様子が診断の決め手になることもあります。

1-6. らくに生きるためのサバイバルガイド

「ふつう」を目指すよりも自分らしさとして特性を受け入れ、一般的なマナーを身につけることでトラブルを防ぎやすくなります。

自閉スペクトラム症の方が無理なく過ごすためには、「人と違う」ことを受け入れ、無理に「ふつう」を目指さないことが大切です。特性には得意・不得意の凸凹があるため、できないところを責めるのではなく、欠点も含めて自分らしさと捉えるとよいでしょう。

1-7. 職場での環境調整と、向いている仕事・向いていない仕事

感覚過敏への環境調整や、特性に合った仕事選びが、無理のない働き方につながります。

自閉スペクトラム症の方は特定の感覚に対して過敏であることが多く、障害をオープンにしている職場であれば、上司や同僚の理解を得て感覚過敏への対処をすることができます。

1-8. 自閉スペクトラム症の人が生きやすくなるための工夫

メモの活用や生活リズムを整えるなど、日常のちょっとした工夫が過ごしやすさにつながります。

日常生活のなかで自分自身が気持ちよく過ごせるよう、いろいろと工夫をすることも大切です。

出典・参考文献

「図解 よくわかる 大人のアスペルガー症候群」

著者・発行元:上野一彦・市川宏伸 | 出版社:ナツメ社

「Comorbid atypical autistic traits as a potential risk factor for suicide attempts among adult depressed patients: a case-control study」

著者・発行元:Takara, K., Kondo, T. | 出版社:BioMed Central | 発行年:2015

「オトナの発達障害大図解 ASDとADHDの基礎知識から社会復帰の方法まで」

著者・発行元:藤田潤・古川修・森脇正詞

「神経発達障害のすべて(こころの科学 増刊号/DSM-5対応)」

著者・発行元:森則夫・杉山登志郎(編) | 出版社:日本評論社 | 発行年:2014

2. 大人のADHDについて

2-1. 大人のADHDとは

ADHDは子どもの頃から続く脳の機能的な特性で、治療とスキルの練習によって症状を改善させることができます。

ADHD(注意欠如・多動性障害)は発達障害の一つで、子どもの頃から症状がみられ、大人になっても症状が残ることがよくあります。公表している著名人も複数いらっしゃいます。知的障害とは異なり、性格が怠惰というわけでもなく、脳の機能的な障害だと考えられています。

2-2. 大人のADHDの主な症状

「不注意」「多動性」「衝動性」の3つが主な症状で、そのうち1つが強く表れることもあります。

ADHDには「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの主症状があり、そのうち1つが強く表れる場合もあります(注意欠如優位型、多動性優位型)。社会人になると、締切や期限に間に合わない、やるべきことがあるのに関係のないことを始めてしまう、物をよくなくす、ミスが多い、片付けられない、待ち合わせに遅れる、思いつきで行動するといった形で表れます。

2-3. 「誰にでもある症状」とADHDの違い

誰もが経験する注意散漫さと違い、ADHDは複数の場面で強い症状が続き、社会生活に支障が出ている状態を指します。

注意散漫になったり、順序立てて物事ができなかったり、興味のないことに集中できないと感じることは、多くの人にとって身に覚えがあるでしょう。こうした誰にでも経験することと、ADHDの症状とは区別して考える必要があります。

2-4. ADHD症状が日常生活に及ぼす影響

子どもの頃からの失敗体験が積み重なり、否定的な感情やうつ・不安を伴いやすくなります。

注意が散漫になる、順序立てて行動できない、課題を最後までやり遂げることが難しい、衝動的に行動してしまうといった症状は子どもの頃から現れるため、成長する過程で失敗体験を重ねやすくなります。学校での成績不振や対人関係のつまずきから、「自分はだめな人間だ」「何をやってもうまくいかない」と過度に否定的な感情を持ってしまうこともあります。

2-5. 治療は有効か

確立された薬物療法があり中核症状の軽減が期待できますが、生活スキルの練習と組み合わせることが大切です。

大人のADHDには確立された薬物療法があり、日本でも使用でき、一般の精神科で処方される機会も増えてきています。薬物療法によって注意の持続困難、多動性、衝動性といった中核症状を軽減でき、およそ7割程度の改善が報告されていますが、症状が完全になくなるわけではありません。

2-6. 生活スキル①:スケジュール管理と書類整理

予定や書類の情報を1か所にまとめ、「見える化」する仕組みづくりが基本になります。

物事を順序立てて計画するには、予定やメモをあちこちに分散させず、1つの手帳やアプリに集約することが基本になります。

2-7. 生活スキル②:集中できる環境づくりとなくし物対策

気が散る要因をあらかじめ遠ざけ、物の置き場所を固定することが対策の基本です。

自分がどのくらいの時間なら集中を保てるかを普段から把握しておくと、作業の計画が立てやすくなります。気持ちがそれてしまったときは、「これは今やるべきことだったか」と自分に問いかけ、作業に意識を戻す練習をするとよいでしょう。

2-8. よくある困りごとへの対策

締め切りや約束忘れ、生活リズムの乱れなど、よくある困りごとにはそれぞれ具体的な対処法があります。

大人のADHDでは、いくつかの典型的な困りごとがみられますが、それぞれに具体的な対処法があります。

出典・参考文献

「大人のADHDの認知行動療法 本人のためのワークブック」

著者・発行元:スティーブン・A・サフレン・スーザン・スピリッチ・キャロル・A・パールマン・マイケル・W・オットー(監訳:坂野雄二) | 出版社:日本評論社

「ADHDタイプの大人のための時間管理ワークブック」

著者・発行元:中島美鈴・稲田尚子 | 出版社:星和書店 | 発行年:2017

3. ワーキングメモリーについて

3-1. ワーキングメモリーとは

ワーキングメモリーは、目的のために必要な情報を一時的に覚えておく記憶の働きで、日常生活のさまざまな場面で使われています。

ワーキングメモリーとは、今取り組んでいる作業に必要な情報を、頭の中に一時的に置いておきながら処理する働きのことです。そこに弱さがあると、学習や社会生活で困難が生じることがあります。たとえば、2階に財布を取りに行ったのに何を取りに行ったか忘れてしまい、元の場所に戻ってようやく思い出して再び取りに行く、という経験は誰にでもあるものですが、これは一時的に情報を覚えておくことに失敗した例です。

3-2. 子どもにおいてワーキングメモリーがエラーすると何が起こるか

指示を忘れる、計算でミスをするなど、ワーキングメモリーのエラーは学習面のつまずきにつながります。

ワーキングメモリーが弱い子どもは、先生が口頭で出した「教科書を開いて、22ページの2番を解いて」という指示のうち、最初の「教科書を開いて」までしか覚えていられず、次に何をすればよいか分からなくなることがあります。同様に、繰り上がりのある筆算では、繰り上げた数を頭の中に置いたまま次の桁の計算に移る必要があるため、繰り上げた数自体を忘れてしまい計算ミスにつながることも珍しくありません。

3-3. ワーキングメモリーの特徴

「保持」と「処理+保持」の2種類があり、長期記憶とも密接に関わっています。

ワーキングメモリーには「保持」と「処理+保持」があります。何かを覚えておくことを情報の「保持」と言い、何かをしながら同時に何かを覚えることを「処理+保持」(マルチタスク)と言います。鍋に火をかけて掃除をしていたら鍋のことを忘れてしまう、話が盛り上がって元々何の話をしていたか思い出せなくなる、といったことは、処理が加わったために保持に失敗したケースです。

3-4. ワーキングメモリーは年齢により変化する

覚えられる情報量は10代後半から20代前半ごろをピークに緩やかに低下していくため、大人が子どもに指示を出す際は情報量を絞る配慮が必要です。

その場で聞いた言葉をどれだけ多く覚えられるかを調べる課題を行うと、幼いうちはあまり多く覚えられず、成長とともに得点が伸びていき、10代後半から20代前半ごろに最も高くなります。そこをピークとして、その後は加齢とともに少しずつ得点が落ちていくため、年齢を重ねると一度にたくさんのことを覚えにくくなったと感じやすくなります。

3-5. ワーキングメモリーの働きを妨げるもの

刺激の多い環境や不安などの情動面の変化、複数作業の同時進行がワーキングメモリーの働きを妨げます。

ワーキングメモリーの働きは、さまざまな理由で十分に発揮できなくなります。睡眠不足や疲労はもちろん、大勢の前で話すときにうまく話せるか心配で頭が真っ白になる、気にかかることがある、落ち込んだ気持ちや大きな不安があるなど、情動面の変化がある場合も、それらがワーキングメモリーの一部を占めてしまい、他の情報を処理するスペースが減ってしまいます。

3-6. ワーキングメモリーの負担を減らすための方法

「覚えずに済む仕組み」を作ることが、日常生活での負担を減らす鍵になります。

日常生活での工夫としては、「覚えずに済む仕組みを作ること」が鍵になります。

3-7. ワーキングメモリーを鍛えることはできるか

直接的なトレーニングでの向上は難しい一方、運動や質の良い睡眠、ゲームを通じた工夫の発見が役立ちます。

ワーキングメモリー(WM)は学習だけでなく家庭や仕事でも重要なため、弱さがあると「トレーニングで強くすればいい」と考えがちですが、実際には簡単ではありません。腹筋運動をどれだけ続けても、それだけでゴルフのスイングが上達するわけではないのと同じように、特定の課題の成績が伸びても、日常生活全般の困りごとの解消には結びつきにくいためです。

3-8. ワーキングメモリーの弱さと付き合う方法

自分の力で変えられる部分と、簡単には変えられない部分とを分けて考え、日々の習慣や工夫で補っていくことがストレス軽減につながります。

ワーキングメモリーに弱さのある方は、わからないことに直面すると不安や混乱からパニックになってしまうことがあります。そんなときは「新しいことは最初ゆっくり理解するけれど、いったんわかれば普通にできる」という心構えを持っておくと、安心感が生まれやすくなります。

出典・参考文献

「教室の中のワーキングメモリ 弱さのある子に配慮した支援」

著者・発行元:河村暁 | 出版社:明治図書出版 | 発行年:2021

「脳のワーキングメモリを鍛える!情報を選ぶ・つなぐ・活用する」

著者・発行元:トレーシー・アロウェイ・ロス・アロウェイ(訳:栗木さつき) | 出版社:NHK出版 | 発行年:2014

4. 関連情報:アンガーマネジメント

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関連Q&A

Q発達障害がメディアで多く取り上げられるが、実際に悩んでいる人は多いのか?

A発達障害は生きづらさの原因を説明しやすく周囲にも理解されやすいため注目されている。罹患者数増加を示す明確なエビデンスはないが、低出生体重児・父親の高齢化・虐待など要因の増加や、成人でも診断できる医師の増加が影響している可能性がある。

Qそもそも発達障害とはどのようなものか?

A知的障害ではなく、脳の認知機能の偏り(発達凸凹)により社会不適応を起こす状態。自閉スペクトラム症・ADHD・学習障害などが含まれる。幼少期は気づかれにくく、大人になってから不適応となることも多い。

Q発達障害と上手に付き合う方法は?

A発達検査等で自分の得意・不得意を理解し、自分に合った生活の工夫(自分マニュアル作成)をする。周囲には具体的な指示や視覚的な工夫といった合理的配慮を求め、自分の特性を説明できるようになることが重要。

Q子供が遊びに集中しすぎている気がする。自閉症について教えてほしい。

A自閉症には一つのことに過集中する特性があるが、それだけで自閉症とは言えない。自閉スペクトラム症は場の空気が読めない、興味の偏りやこだわりの強さが特徴で、集団生活に支障をきたすことがある。過集中を活かして学業で優秀な成績を収める人も多いが、社会人になり協調行動が必要な場面で不適応となることがある。

Q自閉症との付き合い方を教えてほしい。

A自分用のマニュアルを作る、メモをとる習慣をつける、スマートフォンを活用する、自室に物を置きすぎない、一人の時間や生活リズムを大切にする、没頭できる趣味を持つ、家族や当事者同士のつながりを大切にするといった工夫が有効。

Q大人になって周囲との付き合い方が苦手で「空気を読め」と言われる。仕事もつらい。どこに相談すればよいか?

A自閉スペクトラム症の特性から生きづらさを感じ、二次障害としてうつ症状や不安症状(幻聴・被害念慮を含む精神病様症状)を併発することがある。うつ病受診者の約11%に自閉スペクトラム症が見られ、対人関係の困難・いじめの既往・精神病様症状・29歳未満での受診がASDを疑う所見とされる。まずは精神科・心療内科への相談が勧められる。

Q以前紹介された大人のADHDについて、検査はあるのか。どんな検査をするのか?

A特殊な検査はなく、幼少期からの生活の中でADHD症状があったかを確認していく。診断には「2つ以上の場面」で症状が出ていること、社会生活に支障をきたすほど程度が強いこと、症状が12歳未満から出現していることなどが重要となる。

Q大人のADHDについておさらいしてほしい。

A注意欠如・多動性障害という発達障害の1つで、注意の持続困難・多動性・強い衝動性の3主症状がある。12歳までに症状が現れ大人になっても続くことが多く、失敗体験の積み重ねから二次的な不適応を起こしやすい。薬物療法で症状は緩和できるが0にはならないため、生活スキルを補う工夫も重要。

Q自閉スペクトラム症(ASD)とはどのようなものか?

A生まれつき脳機能の一部に発達の偏りがある発達障害の一つ。場の空気が読めない、他人への興味が薄いといった対人面の特徴(相手の気持ちが読めない)と、こだわりの強さが特徴。二次障害としてうつや不安症状を引き起こすことがあり、治療は薬物療法(対症療法)と特性理解・ソーシャルスキル練習などの心理社会的治療が行われる。

Q自閉スペクトラム症の人に向いている仕事は?生きやすくなる工夫は?

A反復作業やルール通りに進める仕事、計画的に進められる仕事(専門技術職、文章校正、在庫管理、清掃、エンジニア等)が向き、接客業やマネジメント業務など臨機応変な対応が必要な仕事は不向き。自分用マニュアルの作成、メモ習慣、スマホ活用、一人の時間の確保、生活リズムの維持、家族・当事者同士のつながりが生きやすさにつながる。

監修:久場禎三(沖縄中央病院 院長・精神科医/ラジオ番組「こころの架け橋」パーソナリティ)