🩹 トラウマ・PTSD
トラウマ・PTSDについて
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このページでわかること
トラウマ(心の外傷)とPTSD(心的外傷後ストレス障害)について、その違いや症状の特徴、治療の流れから、本人が回復のために持てるとよい考え方、周囲の人ができる支え方までをまとめています。
1. トラウマ・PTSDについて
1-1. トラウマ(心の外傷)とは
トラウマとは、時間がたっても記憶が薄れず、繰り返し強い不安や恐怖が蘇る深刻な心の傷のことです。
阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件の被害者が心に深い傷をおったことでPTSDという概念が知られるようになりました。トラウマとは、簡単にいうと心の傷のことです。原因となった事件を何度も思い出し、その不安や恐怖から社会生活が困難になったりします。
そのきっかけとしては、災害や事故にあい、強い恐怖に襲われたり、身の危険を感じるような怪我が起きたりすることが多いです。一時的な不安や恐怖と違って、トラウマは事件や事故のあと、心の傷が残ってしまい、繰り返しその時と同じくらいの不安や恐怖が出て来る状態のことです。
日常会話の中で「トラウマになって」と気軽に使われることも多いですが、医学的には治療を要するかなり深刻な心の傷のことを指します。精神医学的なトラウマとは、事件や事故にあってから何ヶ月や何年経過しているのに、その記憶を何度も思い出し、苦しみ続けている状態なので、会話の中に出すこともできないような心の傷で、時間とともに記憶が薄れないものです。
1-2. トラウマ(心の外傷)と、通常の心の傷の違い
通常の心の傷は時間とともに薄れていきますが、トラウマは自然には解決せず社会生活に支障をきたします。
事件や事故のあと、自分では対処することができないほどの心の大きな傷のことを「トラウマ(心の外傷)」といいます。私たちは通常、小さな心の衝撃に対してはそのつど対処しながら生活しています。例えば、何かでショックを受けた場合、くよくよと考えてみたり、気分転換に何かをしてみたり、早く寝てみたり、親しい人にグチを聞いてもらったりというやり方で乗り越えている人が多いです。
病気の症状としてのトラウマではそのようないつものやり方が通用しなくなって、会話にすることすらできないような大きなものになります。
通常の心の傷は、時間が経てば薄れていき、不安の程度が軽くなる、頻度が少なくなる、ひとりでも対処できるという特徴があります。一方トラウマは、自然に解決せず時間がたっても記憶が薄れていかない、ショックが原因で社会生活が困難になる、引き金となるようなことで強い恐怖を感じるという違いがあります。
1-3. PTSDという病気
PTSDには「再体験」「回避」「過覚醒」という3つの特徴的な症状があります。
大きな事件や事故のあと、心の外傷のため生活に支障をきたしている状態をPTSD(Post Traumatic Stress Disorder、心的外傷後ストレス障害)といいます。災害や事故にあったあとにPTSDが起こる場合があり、主に3つの特徴があります。
- 再体験症状:トラウマ体験を思い出し、再び体験しているような感覚となり、強い不安・恐怖心を感じる(「フラッシュバック」とも呼ばれる)。思い出したくないのに辛い体験を突然思い出す体験が日常生活で起こり、夢にも出てくるため不眠となったり、学校や職場に通えなくなったりする
- 回避:体験を思わせるもの、状況、場所、人などを避けてしまい、体験のことを思い出さないようにする。結果的に、行動範囲や対人関係が極端に少なくなり生活の質が下がる。似たような状況を恐れて避けようとするため、次第に行動範囲が狭くなり孤立的な状況となっていく
- 過覚醒:小さなことでも気にするようになり、なんでもないことで驚いたり怒ったりする。常に緊張して物音にひどく怖がって何も集中できなくなり、怒りっぽくなって家族との関係が悪化することもある
災害や事故にあって、このような体験をすることは誰しもありますが、この症状が強く、長く続く場合にPTSDと診断されることが多いです。例えば1ヶ月以上、再体験、回避、過覚醒という症状が続き、仕事に行くことができないとPTSDの可能性が高いです。
1-4. きっかけとなる出来事
災害や事故、暴力や性犯罪、いじめや虐待など、さまざまな出来事がPTSDのきっかけとなります。
きっかけは災害や大きな事故にあったり、親しい人の突然死などがあります。もともとはベトナム戦争の体験者が、戦後後遺症として悲惨な記憶に苛まれるという現象からPTSDという概念が生まれました。日本では阪神淡路大震災をきっかけに概念が広まりました。
暴力や性犯罪など悪意のある行為を受けることで発症する人も多く、子どもの場合はいじめや虐待がトラウマとして残ることも多いです。
1-5. 同じ事故でもなる人とならない人がいる
同じ体験をしてもトラウマの影響には個人差があり、打たれ強い人でも悩まされることがあります。
大きな自然災害が起きたとき、トラウマによる症状が出る人と、そうでない人がいます。体験への影響には個人差があり、それを周囲が理解することも大事です。性格や生活環境の違い、被災が少なくてもショックな出来事を見たなどの状況、自責感などが影響し、打たれ強い人でもトラウマに悩まされることもあります。
脳の中では扁桃体という不安を感じる部分の過剰活動が知られています。
1-6. 治療や対処法
治療は薬物療法とカウンセリングなどを組み合わせ、長期的な視点で社会復帰を目指します。
治療は短期間で改善することは少なく、長期的な視点で行われます。薬物療法やカウンセリングや日々の過ごし方の工夫など様々な方法があります。受診は、心療内科や精神科を標榜しているクリニックや精神科病院などで行います。
PTSDの治療目標は、辛い記憶は消すことができませんが、症状を改善させて社会復帰することです。社会生活が困らない程度までにコントロールすることを目指し、治療期間は人によって様々で、すぐに反応する人もいれば長期間かかる人もいます。
基本的なケアとしては、SSRI(セロトニンを増やし抗不安作用のある薬)などのお薬、トラウマについての知識を得ること、周囲の人の理解を得ること、恐怖体験が出現したときの対処法を練習すること、ストレスを軽減させる方法やリラックス法を見つけることなどがあり、さまざまなケアを受けることで少しずつ回復していきます。
1-7. PTSDと診断されたら
PTSDと診断されたら、まず病気について正しい知識を身につけることが治療の基本になります。
まずはPTSDなのか、医師に診断してもらうことが治療の基本となります。PTSDと診断されたら、病気について正しい知識を身につけることが大切です。再体験・回避・過覚醒という症状があること、そしてその症状は大きな外傷による反応であることを理解しましょう。
また、罪悪感や自己評価の低下、人間不信など、トラウマ体験後に思考のパターンが変化していることも理解しておきましょう。
お薬の治療としては、SSRIという抗うつ薬を十分な量・十分な期間内服し続けて、中核症状である再体験、回避、過覚醒を和らげます。その他にも症状を和らげるお薬を使う場合もあります。トラウマとなった出来事に向き合って辛い記憶に慣れていくという治療法などもありますが、記憶を呼び起こすので不安が悪化する場合も多いため、症状をコントロールしながら現実生活への適応を優先させることが多いです。
1-8. 日常の安心感を少しずつ取り戻す
トラウマからの回復には、根拠はなくても、きっと大丈夫だろうという漠然とした安心感を少しずつ取り戻していくことが大切です。
健康に生きていくためには、根拠はなくても、きっと大丈夫だろうという漠然とした安心感が必要ですが、トラウマを持っているとその感覚が持てず、「今後、うまくやっていけないだろう」「不安が襲ってきたらどうしよう」などの心配が強い状態となります。この感覚を取り戻す工夫が必要です。
再体験症状については、意識してゆっくり深呼吸したり身体を動かして緊張をほぐすことによって、ある程度その体験から一歩距離を置くことでコントロール可能となります。自分の中で起こっている強い感情を回避せずに、「今起こっている感情は自分にとってどういう意味があるのか」という視点を持つとよいでしょう。「こんなに悲しいのは、昔の健康な自分が懐かしいからだな」「こんなに頭にくるのは、突然こんなことが起こったからだな」というように、気持ちに蓋をしすぎず一つ一つ感情を確認して、「あんなことがあったから、当たり前の感情だ」と受け入れることで回復へのステップに入っていきます。トラウマを「永遠に残る傷」という捉え方から、「新しい自分への変化の途中」と考えることが大切です。
1-9. 周囲の人が知っておくこと・対応の仕方
「気にしすぎだよ」といった言葉は逆効果になりやすく、本人のペースを尊重した淡々とした支えが助けになります。
身近な人の協力が回復の確かな支えになります。サポートには、回復を助ける効果や、ストレスマネジメント補助の効果があります。そのためには、その人がトラウマを持っているということを認めて理解することが大切で、「気にしすぎだよ」「だれにでもあるよ」という言葉は逆効果になります。
周囲の人がどう思おうが、その人にとってはトラウマを持ったことが事実であり、本人からすると衝撃的な出来事だったということを理解しましょう。また、周囲の人はトラウマについて知識がないということも認め、一緒に勉強して症状や回復の仕方を学んでいくことがとてもよいでしょう。
トラウマ症状によって日常生活でできなくなったことをサポートすることも大切です。症状がひどくて外出できないときは買い物をしてあげたり(ずっとではない)、発作時に一緒にいて落ち着かせたりします。ただし自分でできることは普通に自分でやってもらい、必要以上の特別扱いをしないこと、淡々とした温かい世話を続け、本人のペースを尊重することが望ましいです。
1-10. トラウマから回復するということ
回復には時間がかかりますが、「新しい自分への変化の途中」と捉えることが回復への一歩になります。
トラウマ体験が深刻なものであるほど、回復のプロセスは時間がかかります。時には一生をかけて少しずつ回復していくという人もいますが、しかし「回復しない」ということではありません。「一生消えない傷」と捉えると回復しづらいですが、「元の自分に戻るのではなく、新しい自分への変化の途中」として捉えると悪循環から抜け出すきっかけとなります。
トラウマを思い出すというのは症状が悪化しているのではなく、脳が慣れるためのステップを踏んでいるためという考え方をします。しばらくは大変でも必ず落ち着いてくるということを忘れないでください。
症状がひどい時には、フラッシュバック体験に振り回されて日常生活も困難になったりします。しかし、対処法を見つけたり、現象を症状として捉えることができるようになってくると、「振り回されるもの」から「コントロールするもの」へ変化していきます。「心の傷」は消えるというよりも、症状がありながらも、根拠はなくてもきっと大丈夫だろうという漠然とした安心感を持てるくらいになっていくのが最終的な目標となります。そのためには自分自身への信頼感を取り戻す作業を根気よく続けていくことが必要です。
出典・参考文献
「対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD 問題と障害の正しい理解から対処法、接し方のポイントまで」
「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」