🎒 10代・思春期のメンタルヘルス
10代・思春期のメンタルヘルスについて
10代・思春期のメンタルヘルスに関する記事(全2本)を1ページにまとめました。目次から気になる項目へジャンプできます。
このページでわかること
10代・思春期に多い悩みを4つのテーマに分けてまとめています。友だち関係とのつき合い方、自分の「タイプ」の知り方、感情や自信との向き合い方、そして大人との関係や深刻な悩みを抱えている場合の相談先まで、幅広く紹介します。SNSに関する記述は最新の利用実態に基づいています。
このページは、水島広子氏・本田秀夫氏の著書を参考にしながら、沖縄中央病院の臨床現場での経験も交えて構成しています。より詳しい内容は、各書籍(出典は本文末に記載)をご参照ください。
1. 友だち関係とのつき合い方
1-1. 距離感の悩み
「みんなと仲良く」よりも「自分が楽しく」を優先し、自分にとって心地よい距離感を探ることが大切です。
友だち関係の悩みの多くは、根本的に「自分を取り囲む今の人間関係に満足できていない」というところから生まれます。そこで「もっと友だちを増やそう」「もっと親しくなろう」と追い求めても、ないものねだりになってしまい、かえって苦しくなることがあります。
モヤモヤした時は、「そもそも友だちってなんだろう?」と考えてみるとよいでしょう。「いつも一緒にいられるのが友だちで、そういう相手を作らなきゃ」と思い込んでいると、そこまで親しくなれない相手にも無理にノリを合わせてしまい、自分が我慢することになります。
思春期には、いつも誰かと交流しているフレンドリーな人間になろうとする人が多いですが、もしそれがしんどいと感じるなら、その理想は手放してOKです。「たまにしか遊ばないけど、あの子とは仲が良い」という方向に考えを変えると、無理なくつき合っていけます。
満足のいく友だちづき合いをするには、「みんなと仲良く」よりも「自分が楽しく」を優先してみましょう。「友だちのために何をすればいいか」ではなく、「自分はどんな友だちづき合いをしたいのか」を軸に考えることが大切です。友だちとの距離感はいろいろあり、自分が一番心地よくいられる距離感はどれくらいなのか、まずは自分の気持ちを大切に探ってみましょう。友だちの形に一つの正解などはありません。焦らず自分のペースで見つけていけばよいでしょう。
1-2. グループに入れない・雰囲気が合わないとき
場の雰囲気に気づきにくいタイプの人は、自分から周囲に具体的なフォローをお願いしてみるのも一つの方法です。
授業や行事で少人数のグループを組む時、うまく入れず最後まで残ってしまうという悩みを持つ人がいます。小学校低学年までは「みんなで仲良く」が基本ですが、高学年や思春期になると「気の合う友だちと遊びたい」という考え方に変わり、つき合いが「狭く深く」なっていきます。
思春期特有のこうした変化や、場の雰囲気に気づきにくいタイプの人がいます。「空気が読めない」と言うとネガティブに聞こえますが、見方を変えれば「人に流されない」「意見がブレない」という素晴らしい長所でもあります。
しかし、雰囲気を気にしないタイプは、グループの会話ですれ違うことが起きやすくなります。「自分の話だけをして相手の話を聞かない」「話に変なツッコミを入れて会話を止めてしまう」といったことに心当たりがあるなら、少しやり方を調整したほうが過ごしやすいです。
自分で場の雰囲気に気づくのが難しいなら、一人で抱え込まずに「人の力を借りる」のがおすすめです。得意な人からアドバイスをもらう感覚で、周りの友だちや大人にフォローをお願いしてみましょう。例えば、「ときどき話についていけないことがあるから、後で説明してくれると助かる」「私が話しすぎている時は、こっそり背中をトントンと叩いて合図してほしい」など、自分がどういうフォローをしてほしいのかを具体的に伝えておくことで、グループ活動での居心地は格段によくなります。無理に一人で空気を読もうとせず、周囲に頼る勇気を持つことが、自分らしく過ごすための大切な一歩となります。
1-3. 頼まれごとを引き受けすぎるとき
友だち関係は「お互い様」で成り立つもので、一方的にがんばりすぎているなら断ることも大切です。
「頼まれごとを断れない」「がんばりすぎてしまう」という悩みがあります。本人は「みんなの役に立ちたい」「自分ならできる」と思って引き受けますが、実際には限界を超えていて、睡眠不足になったり食欲が落ちたりと、ストレスで体調を崩してしまうことがあります。
友だちからの期待に応えようとして体調に変化が出ているなら、それは明らかに「休息が必要なサイン」です。勇気を出して頼まれごとは断り、自分の時間をしっかり確保することが最優先です。体調に表れていなくても、知らず知らずのうちにストレスが溜まることもあります。そんな時は、友だちとの関係が「お互い様」になっているかを意識してみましょう。部活が忙しい友達の代わりに何度も掃除当番を引き受けたのに、自分が頼んだときは断られます。テスト前にいつもノートを借りにくる友達は、自分の苦労に気づいているのかなど、「がんばっているのはいつも自分だけ」という状況であれば、断ることも考えてみましょう。
友だち関係は基本的には「お互い様」で成り立ちます。自分が相手のために何かをする代わりに、自分も相手から何か得るものがあるから関係は続きます。「誰かの役に立ちたい」「人の話を聞くのが好き」という人は、頼まれる回数が多くなりがちですが、トータルで対等な関係になっていれば問題ありません。「相手も自分のために何かをしてくれる」「自分も困った時にはこの子に頼りたい」。そう思える相手ならがんばってもよいでしょう。しかし、常に自分の体調が崩れていないか、相手との関係が一方的になっていないかを意識することが、自分を守るためには不可欠です。
1-4. 関係が途切れる・「運」の要素
誰と仲良くなるかは「運」で決まる部分も大きく、関係が途切れても自分を責める必要はありません。
「親友が学校を休むと心細くて早退したくなる」という悩みを持つ人がいます。一人でいるのがつらくてその場から逃げ出したいと思うのは、ある種の「自己防衛」であり、決して「弱い人間だ」と自分を責める必要はありません。
「ここにいたくない」と感じる自分を許してみましょう。
大人はよく「友だちをたくさん作ろう」と言いますが、誰と仲良くなるかは、実は「運」で決まるところも大きいです。気の合う相手がたくさんいない環境になった時は「今年は運がよくなかっただけ」と考えて、無理に誰かと仲良くしようと焦らなくても大丈夫です。仲良しグループだったのに急に外されるなど、思春期の友だち関係はある日突然崩れることがあります。思春期のつき合いは、見た目やノリ、雰囲気などの「動物的なカン」で決まることも多いため、論理的な理由がないこともよくあります。
だからこそ、外された理由を探してもわからない時や、相手の理由に納得できない時は、「自分が悪いわけじゃないんだ」と考えていいのです。お互いに悪くなくても関係が途切れることはあります。これを機に、別の友だちとのつき合いに気持ちを切り替えていくとよいでしょう。焦って興味のない話題に無理やり話を合わせても、結果的にあまりいいつき合いにはなりません。それよりも、自分の好きなことや自分のペースを大事にして毎日を楽しんでいる方が、自然と気の合う人に出会える「友だち運」も向いてくるはずです。
1-5. 陰口や悪口、SNSのストレスとどうつきあうか
陰口は言っている本人の不満の表れであり、SNS上のトラブルにも自分のペースを守って対応することが大切です。
クラスや部活などで陰口を言われているのではないかと気になり、悩むことがあります。しかし、陰口というのは対象となった人の悪口に聞こえますが、実際は陰口を言っている本人が自分の不満を発散しているだけです。
本当に悪口を言っている人のやり方や方針を変えてほしいなら堂々と言うはずですが、それができないのは満たされない自己愛の歪んだ表現と言えます。陰口を言う人は、自分が傷つくのが怖い自信のない人という見方があります。それは相手の問題であり、こちらが責任を負う問題ではないと割り切るのがよいでしょう。
また、InstagramやTikTokのDM・グループ機能、LINEのグループトークなどで誰かが悪口で盛り上がっている時、自分は参加したくないが無視するのも怖いという状況があります。その場合は「透明人間」になるのがおすすめです。悪口には同調せず、相手の困っている気持ちにだけ「大変だね」と共感を示すことで、相手を安心させつつ自分は安全な位置にいることができます。SNSの返信が遅いと不安になる人がいますが、自分に自分のペースがあるように相手には相手の事情があります。相手の返信が遅い理由を勝手に決めつけると自意識過剰になってしまいます。SNSの返信ペースについていくのが苦しいなら、「自分は天然で反応が遅い」というキャラ設定をしてしまうのも一つの手です。自分のペースを守ることが自分を大切にすることです。どんな場所でも自分のペースを守る力は、大人になり社会に出てからも必ず役立つスキルとなります。返事が極端に遅くならず、普段から誠実に対応する姿勢さえ貫いていれば、だんだんと周りも理解してくれるようになります。無理をして自分をすり減らす必要はありません。
2. 自分の「タイプ」を知る
2-1. 「みんなと違う」という違和感の捉え方
「みんなと違う」という違和感は、実は自分らしさを知るための大きなチャンスでもあります。
10代の頃は、学校という集団生活の中でほかの人と自分を比べる機会が多く、どうしても自信を持つのが難しい時期です。「自分はダメだ」「みんなとは違う」と思い悩むこともあります。しかし、その「みんなと違う」という違和感の中には、自分らしさが隠れていることが多いです。
違和感は自分を知るための大きなチャンスでもあります。
会話がすれ違ったり、ノリが合わなかったりする時、「自分が変なのかな?」と自分を責める必要はありません。それは多数派が正しくて少数派が間違っているというわけではなく、単に「お互いの相性が合っていないだけ」です。
まずは「自分のタイプ」を知ることから始めましょう。自分が何に一番興味があるか、どんなことが好きなのかを考えてみましょう。「好きなこと」や「得意なこと」は、無理に周りに合わせて変える必要はありません。特に好きでも得意でもないことなら、みんなのノリに合わせてもよいでしょう。
自分のスタイルを決めるということは、何か一つの道を選び、ほかの何かを「あきらめる」ことでもあります。実は「あきらめる」という言葉には、もともと「真実を明らかにする」という意味があります。
納得した上で一つのことを選び、決めましょう。すべてを完璧にこなそうとして頭を悩ませるのではなく、いくつかのものはあきらめて、自分の行く道を決めましょう。この「変えなくていい部分」と「合わせる部分」の見極めができると、学校生活を自分らしく、心地よく過ごすことができるようになります。
2-2. 得意・不得意との向き合い方
苦しい練習に耐えることだけが努力ではなく、不得意の克服より得意を伸ばす方が個性が際立ちます。
苦しい部活の練習などに耐えてきたのに、自分だけ力が伸びないと、「自分には才能がないのか」「無駄な努力をしているのか」と迷い、つらい思いをしてしまいます。しかし、苦しい練習に耐えることだけが「努力」ではありません。
人間には得意・不得意があり、少しの練習で身につくこともあれば、繰り返し練習しても伸びにくいこともあります。一生懸命やってもできなかった時、それを「自分の努力不足だ」と責める必要はありません。何でも得意な人などいません。不得意なことを無理して続けていると、せっかくの「得意なこと」まで消えてしまう場合があります。不得意をがんばって克服しようとするよりも、得意を伸ばすことに切り替えてみましょう。そうすると、いろいろなことを努力しやすくなり、個性も際立ちます。
これから努力を続けるか諦めるかで悩んだ時は、「あきらめる」と「我慢する」を組み合わせて考えてみましょう。好きなことのためなら、苦しいことがあっても「あきらめないで、我慢する」ことができます。その場合、結果が出なくても「いい思い出」だと思えるはずです。一方で、嫌いなことややりたくないことを「あきらめて、我慢する」状態を続けていると、心が不調になってしまいます。「乗り越えること」を基準にするのではなく、自分の心の「好きかどうか」という直感で判断して決断することが、自分らしい努力を長続きさせる秘訣です。
2-3. 遅刻や忘れ物が多くて叱られる・宿題が終わらない
集中力に波があるタイプは、気合や根性ではなく仕組みで対処し、多少の失敗には開き直ることも大切です。
気をつけていても遅刻や忘れ物を繰り返し、親や先生に叱られて「自分はダメなやつだ」と自己否定的になってしまう悩みを持つ人がいます。しかし、「毎日必ず遅刻しているか?」「大切なものを全部忘れているか?」と振り返ると、ちゃんと間に合っている日や忘れない日もあるはずです。
つまり「集中力に波がある」ということです。そういうタイプの人は本番に強い人が多く、気を張っていると本番前に疲れてしまいます。「いつでも完璧」を目指そうと欲張らず、自分の長所を生かすために、多少の遅刻や忘れ物にはある程度目をつぶる「開き直り」も大切です。気合や根性でカバーしようとせず、チェックリスト、アラーム、指差し呼称など、仕組みで忘れ物を防ぐ工夫を習慣にしていくとよいでしょう。
自分の特徴を短所ではなく、長所としてポジティブに捉え直してみましょう。例えば「落ち着きがない」は「行動力がある」、「話がとっちらかる」は「発想が豊か」、「怒りっぽい」は「信念がある」と変換できます。考え方を変えるだけで自分を受け入れられるようになります。
夏休みの宿題のやり方でも自分のタイプがわかります。夏休み開始と同時に全力で駆け抜ける「速攻タイプ」、コツコツ進めるが予定が崩れると動揺しやすい「計画タイプ」、土壇場に強い「ギリギリタイプ」。特にギリギリタイプの人は、社会に出ても仕事を後回しにしがちですが、最終的に期日に間に合えば問題ありません。計画的に進める人のやり方に無理に合わせる必要はなく、見通しが甘い時は親や友だちを頼るなど、自分らしいやり方を身につけることが重要です。
2-4. 「普通」の相対性
「普通」は狭いコミュニティの中だけのルールに過ぎず、合わないと感じたら別のコミュニティを探してみましょう。
自分では普通にしているつもりなのに、友だちから「えっ?普通はこうでしょ」「ちょっと変だよ」とキツめに言われ、正解がわからなくなってしまう悩みをもつ場合があります。何を言っても否定される気がして、発言するたびにビクビクしてしまう人もいるでしょう。
学校は集団行動が多く、みんなのノリに合わせた方が無難な場面があります。しかし、ノリを合わせるのが苦手で、楽しくない気持ちが態度に出てしまうタイプの人は、無理に交流して自分をすり減らすのではなく、その人たちと少し距離をとるのも一つの立派な方法です。友だち同士の集まりの中でできあがった「普通」は、その狭い教室という人間関係の中でのルールや評価に過ぎません。一歩外の集団に行けば、まったく違うことが「普通」とみなされている場合もたくさんあります。一つの「普通」に縛られる必要はないのです。
自分が所属しているコミュニティの「普通」に合わせることが苦しい、息苦しいと感じるなら、自分に合いそうな基準を持っている「ほかのコミュニティ」を探してみましょう。学校の部活動や委員会で居心地のいい集団を探すのもよし、学校外の習い事や地域の趣味のサークルに参加するのもおすすめです。同級生よりも、年上や年下の人とつき合う方が自分らしくいられるという人もいます。無理にいまの場所に馴染もうとするより、できる範囲で「ほかの普通」に目を向けてみると、世界が広がり、心がスッと楽になっていきます。
2-5. 「自分は発達障害かも」と思ったら
発達障害は病気というより一つの「タイプ」であり、工夫や周囲への相談で困りごとは和らげられます。
忘れ物が多い、片付けが苦手などで悩み、ネットで調べるうちに「もしかして自分は発達障害かも」と不安になることがあるかもしれません。「障害」や「病気」という言葉を聞くと、一生このままなのかと怖くなる人もいるでしょう。
しかし、発達障害は病気というよりは、一つの「タイプ」のようなものだと考えてみてください。例えば「不注意」などは誰にでも少しはある特性ですが、その特徴が人よりも強く出ているタイプの人を指す言葉なのです。特徴があるからといって必ず苦労するわけではありません。持ち物の一覧が貼り出されていたり、周りに声をかけてもらうなど、環境によって苦労の度合いは大きく変わります。同じ程度の特性があっても、快適に過ごせて生活上の困難がなければ診断されないこともあります。
自分の特徴がわかったら、それが困難にならないよう環境を工夫したり、堂々と周りの人を頼ったりすればいいのです。「みんなができていることが自分にはできない」と劣等感を持つ必要はありません。不得意なことを気にしすぎて、あなたの個性が消えてしまわないようにしてください。悩みが消えない場合は一人で抱え込まず、親やスクールカウンセラーなど信頼できる大人に相談しましょう。大人の協力を得て専門家の診察を受ければ、自分の特性を深く理解でき、学校で適切な配慮や支援を受けられる場合もあります。「みんなの普通」に縛られず、自分らしさを大切に生きていきましょう。
3. 感情と自信の整え方
3-1. 感情には役割がある
イヤな感情には自分を守る役割があり、感情を「使いよう」に扱えるようになることが折れない心につながります。
10代は子どもから大人になる大切な時期であり、体も心も大きく変わっていきます。これまでに経験してこなかったような出来事が起こり、どうしたらよいかわからなくなることもあります。この時期に「イヤな気持ち」の扱い方を学ぶことによって、失敗や試練に出会っても「折れない心」を育てることができます。
人間は感情的な生き物であり、喜び、悲しみ、怒り、不安、焦り、落ちこみなど、さまざまな感情を持っています。マイナスの感情を抱く自分を「弱い証拠だ」と否定し、前向きになろうと無理をして感情をなくそうとする人もいるかもしれません。しかし、どんな感情にもきちんとした役割があります。イヤな感情は、体の「痛み」や「熱さ」と同じです。熱いものを触って「熱い!」と感じなければ大やけどをしてしまうように、心も「ムカつく」「不安だ」と感じるからこそ、自分にとってよくないことが起きていると気づき、結果として自分を守ることができます。
イヤな感情をただ抱えたままにするのではなく、そのきっかけが何だったのかをはっきりさせる習慣をつけましょう。「部活で疲れているのに親が勉強しろと言うから」など、きっかけを明確にすることで、自分を守るためにどうすればいいかがわかりやすくなります。自分を注意深く観察することで、「自分がネガティブになるのにはきっかけがある」と気づけるようになります。「自分が嫌い」と思うことは自分自身を傷つけることになり、一番自分を守れない状態を作ってしまいます。感情は「使いよう」であり、上手な感情の使い手になれば、人生の質はぐんと上がり、ストレスを大きく減らすことができます。
3-2. 怒っている人の見方
怒っている人は例外なく「困っている人」であり、そう捉えることで自分を責めずに済むようになります。
人から怒られたり、うるさく注意やアドバイスをされたりすると、頭にきたり傷ついたりして不愉快になるのが当然です。しかし、実は「怒っている人」というのは例外なく「困っている人」という見方があります。ものごとが自分にとってスムーズに進んでいれば人は腹を立てません。
「お前がだらしないせいで」とさもこちらが悪いかのように怒ってくる時も、実は「困っているから何とかして!」という悲鳴を上げているという見方を持つと捉え方が変わってきます。
本当に教育目的で厳しく叱る人は、感情的になったり相手を否定するような言い方をしたりは絶対にしません。堂々と「困っているから助けて」と言える大人のほうがカッコいいですが、なかなかその勇気が出せない人はとても多いです。これを理解しておけば、怒っている人や口うるさい人を見て、「どうせ自分が悪いのだ」と自分を責める必要はなく、要するにこの人は現状が思い通りにならなくて困っているんだな、と見ることができます。そうすれば世界はずいぶん違って見えてくるはずです。
自分自身についても同じことが言えます。「ムカつく」と思う時には、自分が何か困ったことになっているということです。自分の感情の裏にある「困っていること」に気づくことで、やみくもに相手に反撃したり、自分を守りに入ったりせずに、冷静に対処できるようになります。相手の言葉をそのまま受け取らずに、その奥に隠れている声に気づくことが一番大切です。
3-3. 自信をなくした時
自信をなくした時のつらさは筋肉痛のようなもので、追い打ちをかけずにおさまるのを待つことが早い回復につながります。
人前での発表に失敗した時など、思わぬ時にショック(衝撃)を受けると、人は「もう傷つかないようにしよう」という防衛モードに入ります。その結果、自信を失い、今まで気にしていなかった自分の欠点ばかりが急に目につくようになります。
これはもともと自分を守るために人間に備わった能力でもあります。ショックを受けると、人は「もう傷つきたくない」と強く思い、「自分が完璧になれば傷つかずに済む」と思い込み、必死に自分の「ダメなところ」を探して直そうとしてしまいます。しかし、人間は完璧にはなれません。欠点を探し始めるとキリがなく、「自分はここもダメ、あそこもダメだ」と落ち込む材料ばかりが増え、かえって自信を失うという悪循環に陥ってしまいます。
「怖い」「自信がない」という気持ちは、運動をした翌日の筋肉痛のようなものです。痛みがあるからといって体が壊れたわけではなく、時間が経てば自然に治まっていきます。そこで「自分はダメな人間だ」とさらに「ダメなところ」を探して追い打ちをかけるよりも、痛みが引くのをただ待つ方が、結果的に早く回復につながります。
特に現代では、InstagramやTikTok、LINEなどのSNSで、自分の悪口など予期せぬ視覚的な情報が突然飛び込んでくるため、衝撃を受けやすいです。視覚的な情報はダイレクトに心に刺さります。総務省の調査では、10代のSNS利用率はTikTokが65.7%、Instagramが7割超、LINE・YouTubeは9割以上にのぼるとされ、多くの10代がこうした衝撃を受けやすい環境に日常的に身を置いていることになります。衝撃に敏感な人はできるだけSNSを避けるのがよいですが、少なくとも「ネットから受ける衝撃は、実際に受ける衝撃よりも大きく感じられる」ということだけは覚えておきましょう。信頼できる相手がいるのなら、話して聞いてもらうと心の整理が早くなります。
3-4. 他人と自分を比べてしまう・「縦の比較」
他人と比べる「横の比較」ではなく、過去の自分と比べる「縦の比較」で自分の成長を見る習慣をつけましょう。
話のおもしろい友だちやスタイルのいい人と自分を比べて、落ち込んでしまうという悩みがあります。しかし、他人と自分を比較して得られるものは何一つありません。他人と自分を比べる「横の比較」は、多くの場合自分に劣等感を植え付けるだけです。
仮に自分が勝っていると感じて優越感を持てたとしても、もっと優れた人が現れるまでの短い期間の仮の安心に過ぎません。そもそも人が横の比較をしてしまうのは、今の自分に自信がないからこそ、自分以外の外部の基準に「自分は大丈夫だ」という安心を求めてしまいます。特に現代はSNSの普及により、他人のキラキラとうまくいっている部分ばかりが目に入りやすいため、横の比較はますます心をすり減らす原因になってしまいます。
話のおもしろさや体型などは、かなりの程度が先天的に決まっているものです。生まれつき持っている人と比較して自信をなくすのは当たり前のことであり、そこにあまり意味はありません。自分が生まれ持ったものや努力をどう大切にするかが重要です。
自信がぐらついた時は、他人ではなく過去の自分と比べる「縦の比較」をしてみましょう。「一年前は挨拶もできなかったが、今はできるようになった」など、自分を時間軸で見ることで、自分なりの進歩や努力の成果を確実に見つけることができます。病気や怪我でマイナスになっているように見えても、「人の痛みがわかるようになった」など何かしらのプラスの変化は拾えるはずです。横の比較をやめ、自分自身の成長を見る習慣をつけましょう。
3-5. 自信を持てるものがない・やりたいことがわからない
自信は「何をやったか」よりも「どのようにやったか」という生き方の姿勢から生まれるものです。
「自信を持てるものが何もない」「やりたいことがわからない」と将来に不安を抱く10代は多いです。しかし「痩せればいい」「おしゃれになれば」といった目に見える「成果」を求めても、折れやすい不安定な自信しか手に入りません。
人生への満足度を決めるのは、「何をやったか」という結果よりも「どのようにやったか」という過程や生き方の姿勢です。誠実に取り組む、他人を決めつけないといった「生き方」こそが、自信や折れない心に繋がっていきます。
自分を好きになるには、ありのままの自分でいいと思えることが大切です。他人が自信を与えてくれることもありますが、それは「〇〇ができてすごいね」と能力を褒められた時ではありません。「自然体の◯◯さんがいいね」と無条件に肯定された時です。成果を褒められることは結局他人との「横の比較」に繋がり、本当の自信にはなりません。だからこそ自分自身にも「今はこれでいい」と唱えてあげましょう。
また、社会経験の少ない10代で、自分が本当にやりたいことが見えていないのはごく普通のことです。進路に迷った時は、まわりが進学するならしてみるなど、ある程度「流される決め方」をしてもよいでしょう。焦ってやりたいことを見つけようとするより、その時々に一番「自然」と思えること、一番「イヤでないところ」を選びながら、だんだんと自分の向き不向きを見つけていく生き方で十分です。
3-6. 一人の時間とのバランス
友だちといつも一緒にいるのがしんどいと感じるのは自然な感情で、自分に合った一人の時間のバランスを探ってよいのです。
「一人ぼっちになりたくない」という思いから、なるべく誰かと一緒にいようと周りのノリに合わせていると、完全に気を抜いてリラックスできる時間がなくなり、心身ともにしんどくなります。どんなに仲のいい人が相手でも、一緒にいれば多少は気をつかうものです。
友だち関係に多少のストレスはつきものだと思っておきましょう。「友だちと一緒にいたい」と思いながら「いつも一緒にいるのはしんどい」「ときには一人になりたい」と感じるのは、おかしなことではなく人間の自然な感情です。一人ぼっちを恐れるあまり「一人でいるのはよくないこと」と思い込み、一人になりたい自分を責めてしまうと、一息つくことが難しくなります。一人でいる時間をどのくらい持ちたいかという「心地よいバランス」は人によって全く違います。
自分のバランスを知るには、食事の場面を想像してみてください。一人で食べるのが全然平気な人は、一人の時間を意識して作ったほうが楽になります。逆に、いつも誰かと一緒に食べたい人は、友だちと長くいるほうが心地よく過ごせるタイプです。まずは自分がどちらのタイプか見極めましょう。教室という固定された空間が息苦しいなら、学校の中でお気に入りの「一人になれるスポット」を探してみてください。図書館や校庭でのんびり本を読んで過ごすのもいいでしょう。休み時間は友だちと交流すべきという価値観に縛られず、自分で自分をいたわる時間を堂々と大切にしてください。
3-7. 「自分」を主語に話す
決めつけには決めつけで反発せず、「自分」を主語にして穏やかに伝えることで争いを避けられます。
「どうせ自分のことしか考えていない」「若いからいいかげんだ」など、一方的に決めつけてくる人に対しては、不愉快になり反抗したくなります。しかし、決めつけてくる人というのは、立ち止まって考える余裕のない「困っている人」なのです。
そこで「勝手に決めつけるな!」と反抗すると、相手からすればそれもまた「決めつけ」になり、争いがエスカレートしてしまいます。一番効果的なのは、決めつけの連鎖を断つことです。「ああ、そう思うんですね」と穏やかに受け流すことで、相手の意見を肯定も否定もせず、事実だけを確認して終わらせることができます。もし自分の意見を伝える必要があるなら、相手の言葉を一度受け止めた後で「そう見えるかもしれないけれど、私はこう考えているので見守ってほしい」と穏やかに伝えましょう。相手の心にもすんなり届きやすくなります。
また、自分が意見を伝える時は、「自分の領域」の中だけで話すことが重要です。「あなたって言い方がきついよね」という言い方は相手の領域に踏み込んでいますが、「私はこう言われると悲しい」と「自分」を主語にして話せば、相手は領域を侵害されたと感じません。「あなたが勝手に決めるからイヤだ」ではなく、「私にも意見を聞いてくれると助かる」とお願いする形にすれば、相手が変わってくれる可能性は高くなります。困っている時は素直に伝えることで、相手の親切な気持ちを引き出すことができます。自分の気持ちを素直に表現することは、自分と相手を大切にする一番の近道とも言えます。
4. 大人との関係・深刻な悩みを抱えている人へ
4-1. 親へのモヤモヤ
親の口出しにも心配という理由があり、お互いの事情を理解し適切な距離を保つことが健全な関係につながります。
思春期になると、大人や親に対して「うざい」「干渉がうるさい」と抵抗を感じるようになるのは自然なことです。大人のもとで育ってきた子どもが、独立した別の大人の頭で考えようと試行錯誤している証拠です。一方で、親がうるさく口出ししてくるのにも理由があります。
子どもの世界が広がるにつれ、親は「悪い友だちができたらどうしよう」「社会で通用しなくなったら」と子どもの安全を心配し、不安になっています。つまり、親もまた不安を抱えた「困っている人」と言えます。反抗的な態度は親の不安を増長させるため、口出しを減らすには「もう小さな子どもではないから大丈夫だ」と穏やかに態度で示すのが一番です。また、「これだから最近の若い者は」と決めつけてくる大人もいますが、これも余裕がなく困っている証拠です。「勝手に決めつけるな」と反発すると綱引き状態になるため、「そう思われるのですね」と受け止め、綱から手を離すのが大人の対応です。親も一人の人間であり、相性が悪くなることもあります。お互いの事情を理解し、余裕を持って接することができれば、無駄なストレスを抱えずに済みます。
親の機嫌を取るために自分を押し殺す必要はありません。自分の人生の責任者は自分であり、親の不安はあくまで親自身の問題だと割り切る勇気を持つとよいでしょう。精神的な距離を適切に保ち自立を図ることで、初めてお互いを一人の人間として尊重し合える健全な関係が築けるようになります。
4-2. 事情はそれぞれ違う
生まれ持った特性は自分では選べないものであり、それぞれに事情があると気づくと自分にも他人にも優しくなれます。
「人は○○であるべき」と言われて育つと、それを満たしていない人を「出来損ない」のように感じてしまうことがあります。また、自分自身も出来損ないの一人だと思い込んでしまう人も多いです。しかし、出来損ないの人間などいません。
どんな人も、その時にできるだけのことをやっています。それに気づくだけで、視野が広がり自分にも他人にも優しくすることができます。
人はそれぞれ、生まれ持ったものが違います。運動能力や知的能力、性格、体質など、何を持って生まれるかは自分では選べません。好奇心が強い、心配性といった性格も生まれつきかなりの程度が決まっており、それを無理に変えることはできません。大事なのは、そんな自分をどういう風に捉え、プラスの面を伸ばし、マイナスの影響を少なくするかが大切です。自分の特性を知り、工夫できるようになれば、「自分はこれでいいんだ」と思えるようになります。逆に「何をやっても長続きしない」と自分を否定すると、自分が嫌いになってしまいます。能力や容姿、育つ環境や出会う人々など、自分で選べないものはたくさんあります。だからこそ、イヤな人を見た時も、「この人は好き好んでイヤな人になったわけではない」「何か事情があるのだろう」と考える習慣をつけましょう。
何の理由もなくイヤな行動をとる人はいません。自分自身についても同じです。やる気が出ない時でも、自分に「怠け者」というレッテルを貼る必要はありません。なぜやる気が出ないのか、その理由や事情を考えてみた方がずっと生産的です。
4-3. いじめ・心の病気など深刻な問題をかかえている人へ
いじめや心の病気など深刻な問題は一人で抱え込まず、スクールカウンセラーなど信頼できる大人に相談することが大切です。
誰にでもある思春期のモヤモヤを超えて、いじめやリストカット、心の病気など深刻な事態に巻き込まれている人もいます。これらに直面した時は、自分の心が折れにくい考え方を知っておく必要があります。ほとんどのいじめは、いじめる側の心が病んでいて起こる現象です。
いじめられる側に問題があるわけではないため、「自分のどこがいけなかったのか」と答えのない理由探しをするのはやめましょう。リストカットも、死にたいのではなく「何とか生き延びるために」どうしようもない衝撃や苦しさから逃れるための行為であることが多いです。「自分はダメな人間だ」と責めるのではなく、何から衝撃を受けたのかを冷静に振り返ることが回復の第一歩となります。摂食障害やうつ病などの心の病気も、体からの「もっと自分を大切にする生き方に変えたほうがいい」というメッセージ(役割)です。「人にどう思われるか」よりも「自分がどう思うか」を大切にする生き方にシフトしていくチャンスとも言えます。
深刻な悩みを抱えた時は、絶対に一人で解決しようとせず、スクールカウンセラーやチャイルドラインなど、信頼できる第三者の大人を頼ることが何よりも大切です。親からの虐待や家庭内の問題で苦しんでいる場合も同じです。子どもが自力で親を救うことはできません。自分の身の安全を守るため、まずは外部に助けを求めましょう。第三者に相談して問題をオープンにすることが、結果として親自身を救うことにも繋がっていきます。
出典・参考文献
「10代からのメンタルケア「みんなと違う」自分を大切にする方法」
「10代のうちに知っておきたい折れない心の作り方」
「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」