🧩 統合失調症

統合失調症について

統合失調症に関する記事(全5本)を1ページにまとめました。目次から気になる項目へジャンプできます。

このページでわかること

統合失調症は、幻覚・妄想などの「陽性症状」と意欲低下などの「陰性症状」を特徴とする、脳内の神経伝達物質のバランスが関わる病気で、100人に1人ほどが経験する決して珍しくない疾患です。治療は抗精神病薬による薬物療法とリハビリテーションを組み合わせて行い、服薬を続けることが再発予防の鍵になります。幻聴(正体不明の声)への具体的な対処法や、合併しやすい肥満・糖尿病の予防法もあわせて紹介しています。

1. 統合失調症ってどんな病気?

1-1. 統合失調症とはどんな病気?

統合失調症は、感覚や考え、気持ちの統合が障害される疾患で、幻聴や被害念慮などの症状が特徴です。

統合失調症とは、感覚や考え、気持ちなどの統合が障害される疾患です。代表的な症状としては、周りに人がいないにもかかわらず「誰かの声が聞こえる」といった幻聴、「誰かに嫌がらせをされている」と感じる被害念慮、「誰かに追いかけられている」と感じる追跡念慮などがあります。

1-2. どうして統合失調症になってしまうの?

原因はまだ特定されていませんが、病気になりやすい素因とストレスが重なって発症すると考えられています。

現在のところ原因はまだ特定されていませんが、病気になりやすい素因とストレスがあわさって発病するという考えが一般的です。病気になりやすい素因といわれている仮説としては、遺伝の要因(遺伝的な要因はあるようですが、遺伝子の特定まではできていません。

1-3. 「育て方が悪かったから」発症するのか?

統合失調症は育て方が原因で起こる病気ではないことが立証されています。

過去の研究から、統合失調症は育て方が原因で起こる病気ではないことが立証されているので、両親は自分を責める必要はありません。しかし、発症した後に関しては、家族の接し方が病状の回復に影響することが分かっているので、むしろ発症してからの対応法を学ぶことが大変重要です。

1-4. 統合失調症は「脳の病気」

統合失調症は「こころの病気」ではなく、脳内のドーパミンなどの神経伝達物質のバランスが崩れて起こる「脳の病気」です。

統合失調症は「こころの病気」ではなく「脳の病気」です。現在の研究では、脳の機能障害ということがわかってきています。脳内ではドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質が作られていますが、その神経伝達物質が何らかの原因で多すぎたり少なすぎたりすることで、様々な症状が出現すると言われています。

1-5. 症状について

症状は、幻覚・妄想などの「陽性症状」と、意欲低下や引きこもりなどの「陰性症状」に大きく分けられます。

統合失調症の症状は、大きく分けて「陽性症状」と「陰性症状」に分けられます。陽性症状は幻覚・妄想など、通常の生活ではないはずの症状で、病気であることがわかりやすいため、発症していることに気がつきやすく、周囲の人を巻き込むこともあります。

1-6. 治療について

治療は「お薬」と「リハビリ」の両輪で行うことが効果的です。

精神科の医療機関には、入院施設やリハビリ施設をもつ精神科専門病院、通いやすい近くのクリニック、身体の病気を持っている場合に適した総合病院の精神科などがあります。診察を受ける際には、家族が付き添うことが大切です。

1-7. 薬は怖いものではありません

お薬は脳内の神経伝達物質の働きを調整し、苦しい症状を和らげてくれるものです。

お薬には怖いというイメージがありますが、本人が感じている苦しい症状を和らげる作用があります。身体の病気と同じように脳の病気なので、お薬は効果的です。統合失調症は、ドーパミン・セロトニンといった脳内の神経伝達物質の働きがうまくいかないことが原因で引き起こされるため、お薬は出過ぎていたら働きを抑制し、不足していたら補充するといった調整をしてくれます。

1-8. リハビリについて

症状が安定したら、デイケアや地域の就労支援など、自分に合ったリハビリの場を利用するとスムーズに社会復帰しやすくなります。

統合失調症になると学校や仕事を一時的に中断しなければならないこともあります。症状が安定したら、社会復帰のためリハビリを利用するとスムーズです。病院であればデイケアがあり、規則正しい生活リズムを整え、活動を通じて集中力を高め、対人関係を築く練習をし、家族と適切な距離をとってストレスを軽減することができます。

1-9. 家族はどのように接したらよいのか?

家族の接し方は病状の回復に影響するため、責めすぎず・保護しすぎず、本人の気持ちに寄り添う対応が望まれます。

症状の回復には、身近な家族の接し方も重要です。対応によっては再発を招くこともあります。よくあるパターンとして、一部の症状を責めたり、必要以上に厳しく接するタイプ(「お前は甘えている!」「ダラダラするな!」など)と、逆に極端に保護的になって何でもしてあげるタイプ(病気に巻き込まれて自分でできることも過剰に世話をする)があります。

1-10. 受診をためらう場合や、幻覚・妄想への対応

本人が受診をためらう場合は無理に連れて行こうとせず、「困っていること」の改善に協力したいという気持ちを伝えることが大切です。

身近にいる人が本人を病院に連れて行こうとしても、どうしても行きたがらないというケースも結構多くあります。その背景には、自分が病気という自覚がないこと、精神疾患への恐れ、精神科医療への理解が不十分であることなどが考えられます。

出典・参考文献

「統合失調症 あなたはどう答えますか?」

著者・発行元:池淵恵美(編集:笠井清登・村井俊哉・福田正人) | 出版社:Progress in medicine | 発行年:2021

2. 薬物治療ガイド

2-1. このガイドについて

このガイドは、統合失調症薬物治療ガイドラインの内容を患者さん・ご家族・支援者向けにわかりやすく解説したものです。

このガイドは、日本神経精神薬理学会が専門家向けに作成した「統合失調症薬物治療ガイドライン」(2015年)を、患者さんやご家族、支援者にも読みやすいようかみ砕いて解説したもので、インターネット上で公開されています。対象は「統合失調症」という診断を受けた方に限られており、それ以外の診断名がついている場合は想定されていない点に注意が必要です。

2-2. 治療を始めたばかりの方への薬物療法

初発の精神病性障害には、副作用の少ない第二世代抗精神病薬を少量から開始し、2〜4週間かけて効果を判定するのが基本です。

初めて幻覚や妄想などの症状が現れた場合(これを「初発精神病性障害」と呼びます。統合失調症そのものと診断が確定する前の段階も含みます)には、抗精神病薬による治療が行われます。使用する薬剤としては、比較的新しいタイプである第二世代(非定型)抗精神病薬が第一選択とされています。

2-3. どのくらいの期間、薬を続ける必要があるか

初発では少なくとも1年、維持期の統合失調症では長期的な服薬継続が、再発予防のために推奨されています。

初めて症状が出た場合、再発を防ぐという観点から、抗精神病薬は最低でも1年間は服用を続けることが勧められています。1年間という期間が目安とされているのは、そこまでの継続であれば再発予防に効果があるとする研究の裏付けがあることに加え、初発の精神病症状が必ずしもそのまま統合失調症の診断に至るとは限らないためです。

2-4. 薬を減らすこと・薬の選び方

減量が有用かどうかは症状や副作用次第で一概には言えず、再発予防の観点では第二世代抗精神病薬が優先されます。

安定期に入った統合失調症で、薬の量を減らすことがよいかどうかは、現在のところはっきりとした結論が出ていません。量が多いほど副作用のリスクは高まる一方、減らせば症状がぶり返す危険も出てくるため、その人の症状や副作用の程度をみながら、個別に判断していく必要があります。

2-5. 飲み薬と注射(持効性注射剤)の違い

月1回の注射で効果が持続する持効性注射剤(LAI)は、飲み忘れによる再発を防ぎやすい治療法です。

毎日の内服の代わりに、月に1回程度(薬剤により2〜4週に1回)筋肉注射を受けることで効果が持続するタイプの薬もあります。これは持効性注射剤(LAI:Long Acting Injectionの略。「デポ剤」と呼ばれることもあります)と呼ばれ、肩や腰などの筋肉に注射し、体内でゆっくり吸収されることで効果が続きます。

2-6. 症状が再び悪化したときの対応

症状が悪化した際は、まず服薬状況を確認したうえで、増量や変更を主治医と相談しながら検討します。

いったん落ち着いていた症状が再び悪化した場合、まず確認すべきなのは、それまでの薬の量や服用期間が十分であったか、そしてきちんと服薬できていたかどうかです。自己判断で服薬をやめていたことが悪化の原因であれば、まずは服薬を再開することが優先されます。

2-7. 認知機能への影響と対策

適切な用量の第二世代抗精神病薬を用い、抗コリン薬やベンゾジアゼピン系薬剤を極力控えることが、認知機能の維持に役立ちます。

認知機能とは、物事を記憶したり、段取りを考えて実行したりする力のことで、日常生活を送るうえで欠かせない能力です。統合失調症では、およそ半数の方にこうした認知機能の低下がみられるとされています。認知機能の低下を防ぐには、第二世代抗精神病薬を適切な量で使うことに加え、副作用止めとして使われる抗コリン薬や、不安・不眠に使われるベンゾジアゼピン系の薬を、できるだけ使わないようにすることが強く勧められています。

2-8. 体重増加への対処法

体重増加がみられる場合は薬の変更を慎重に検討しつつ、食事と運動など生活習慣の見直しも重要です。

抗精神病薬の中には、体重が増えやすいという副作用を持つものがあります。体重増加を理由に薬を変更・中止する場合は、それによって精神症状が悪化してしまう危険性があることを十分に踏まえておく必要があります。

出典・参考文献

「統合失調症薬物治療ガイド−患者さん・ご家族・支援者のために」

著者・発行元:日本神経精神薬理学会 | 発行年:2018年(元となる診療ガイドラインは2015年作成)

3. 幻聴(正体不明の声)への対処法

今回は書籍『正体不明の声に対処する10のエッセンス』をご紹介します。この本は、「まわりに誰もいないのに、誰かの声が聞こえてくる」という現象を「正体不明の声」と呼び、その対処法について解説したものです。

3-1. 幻聴が聞こえやすい条件

幻聴は「不安・孤立・過労・不眠」の4条件が重なったときに聞こえやすくなります。

幻聴は、「不安・孤立・過労・不眠」という4つの条件が重なったときに出現しやすくなるといわれています。たとえば、遭難したときや無菌室で治療を受けているときなど、極限的な状況でも幻聴が聞こえてくることがあると報告されています。

3-2. 幻聴のタイプ

幻聴には、周りに人がいない場合・いる場合や、特定の場所・音と結びついて聞こえる場合など、いくつかのタイプがあります。

幻聴にはいくつかのタイプがあります。

3-3. 幻聴のルーツ

幻聴の正体は「自分自身の気持ちや考え」であり、実際の他人の声ではありません。

幻聴のルーツは、「自分自身の気持ちや考え」にあります。幻聴として聞こえてくる声は、基本的に他人の声であることが多く、老若男女さまざまで、知人の声が聞こえることもありますが、知らない人の声であることのほうが多いとされています。

3-4. 治療について

幻聴の治療では、生活面の工夫・家族の理解・薬物療法・受け止め方の工夫を組み合わせて行います。

幻聴の治療では、いくつかの取り組みが並行して行われます。日々の生活の中で「不安・孤立・過労・不眠」を溜め込まないよう工夫すること、家族に病気への理解と協力を求めること、そして薬による治療を受けながら、幻聴そのものへの受け止め方を少しずつ見直していくことです(薬にはさまざまな特徴を持つものが多数用意されています)。

3-5. 幻聴がもたらす影響

幻聴を実際の他人の声だと受け止めてしまうと、個人情報漏洩体験や被害妄想など、日常生活への悪影響につながることがあります。

幻聴を「実際の他人の声」として受け止めてしまうと、さまざまな混乱が生じ、日常生活に悪影響を及ぼすことがあります。幻聴の内容は荒唐無稽であることが多いため、それをテレパシーや電波によるものだと思い込んで行動してしまうと、周囲にも影響が及んでしまうことがあります。

3-6. 治療の進め方

治療は本人・家族・精神科スタッフが協力し、「不安・孤立・過労・不眠」の悪循環を断ち切ることを目指して進めます。

幻聴・妄想の治療では、まず悪循環を断ち切ることが大切です。幻聴は「不安・孤立・過労・不眠」が要因となっていることが多いため、精神科で治療を受けながら、これらの要因を取り除いていくことも重要になります。

3-7. 幻聴との向き合い方

「幻聴は実際の他人の声ではない」と理解し、それを常に思い出せるようになることが、幻聴とうまく付き合う鍵になります。

幻聴と上手に付き合うためには、「幻聴は実際の他人の声ではない」ということを理解し、そのことを常に思い出すようにすることが大切です。幻聴は実際に他人の声として聞こえてくるため、最初のうちはそのように思うことがなかなか信じられないという方も多くいます。

3-8. 幻聴と上手に付き合うための工夫

声の内容を気にかけず受け流すために、音楽を聴く、体を動かすなど、自分に合った気そらしの方法を見つけることが役立ちます。

幻聴には反応しすぎないことが基本です。声に言い返そうとすると、かえって強くなってしまうことがあります。まずはいったん考えるのをやめてみて、声を気にかけないための工夫を試してみましょう。

出典・参考文献

「幻覚妄想体験の治療ガイド 正体不明の声 -対処するための10のエッセンス-」

著者・発行元:原田誠一 | 出版社:アルタ出版 | 発行年:2002

4. 肥満・糖尿病の予防

4-1. 統合失調症と肥満・糖尿病の予防について

統合失調症の患者さんは肥満やメタボリックシンドロームの割合が一般より高く、その予防が心身の健康維持に重要です。

2020年5月に日本精神神経学会、日本糖尿病学会、日本肥満学会が監修した「統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド」が発表されましたので、今回はその内容をご紹介します。精神障害をかかえる方のリカバリーを考える上で、体の健康が維持されることは必要不可欠です。

4-2. 肥満とは

肥満はBMI25以上と定義され、統合失調症の患者さんはBMI25以上の割合がやや高い傾向にあります。

肥満とは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値であるBMIが25以上の状態を指します(150cmで56kg、160cmで64kg、170cmで72kg、180cmで81kgが目安)。肥満そのものがすぐに治療の対象になるわけではありませんが、糖尿病や脂質異常症をはじめとした様々な病気につながりやすいことが分かっています。

4-3. 肥満になると何が問題なのか

肥満は糖尿病や高血圧など様々な健康障害につながるほか、抗精神病薬の種類によっては体重増加の副作用が出やすいことも知られています。

肥満によって、減量が必要となるほどの健康障害が起こることがあります。具体的には、糖尿病、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症(痛風)、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脂肪肝、月経異常、不妊、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症、肥満関連腎臓病などが挙げられます。

4-4. 肥満に対する治療

肥満症の治療は、現実的な目標を設定した栄養指導と運動療法が中心です。

減量に取り組む際は、無理のない現実的な目標を立てることが大切です。必ずしも標準体重(BMI22)まで痩せる必要はなく、肥満にともなう健康上の問題が和らぐことを目指すのがポイントです。栄養指導には一定の効果が確認されています。

4-5. 減量のための具体的な食事方法

推定エネルギー必要量よりやや少なく食べることが減量の基本で、腹八分目や野菜を先に食べるなどの工夫が有効です。

体重を減量するためには、推定エネルギー必要量よりも摂取エネルギーを少なくする必要があります。推定エネルギー必要量から230kcalを減らすと、月1kgの体重減少となります(ご飯茶碗1杯分、食パン1枚分に相当)。

4-6. 糖尿病について

糖尿病は血糖を下げるインスリンの働きが不足して起こる病気で、生活習慣が関わる2型が全体の約9割を占めます。

糖尿病は、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌不足や、インスリンが効きにくくなることによって、血糖値の高い状態が慢性的に続いてしまう病気です。血糖値が急激かつ大幅に上がると、糖尿病性ケトアシドーシスという命に関わる状態を招くことがあります。

4-7. 運動習慣の大切さ

適度な有酸素運動と筋トレを続けることで、インスリンの働きが改善し血糖値が安定しやすくなります。

適正な食習慣と適量の運動習慣を身につけることが推奨されています。運動を行うと、肝臓や筋肉に貯蔵されているブドウ糖や脂肪が消費されやすくなり、日常的に運動を続けるとインスリン感受性が高まります。その結果、インスリンの働きが改善し、血糖値が下がって安定しやすくなります。

4-8. 糖尿病の方への食事のヒント

1日3食を規則正しく、野菜から食べる・よく噛むなど、血糖値の急上昇を防ぐ食べ方の工夫が役立ちます。

ダイエットのために1日2食にすることはおすすめできません。食事と食事の間隔が長くなり、空腹の時間が長く続くと、体がエネルギー不足に備えて脂肪を溜め込みやすくなり、体が飢餓状態と判断して基礎代謝も低下し、太りやすい体質となってしまいます。

4-9. まとめ

適切な食事と運動、禁煙・節酒を心がけることが、糖尿病の予防につながります。

糖尿病を防ぐためにできることは、日々の積み重ねです。バランスのよい食事と適度な運動を心がけ、お酒とたばこは控えめにすることが大切で、なかでも食事の見直しは糖尿病予防の要といえます。肥満度と糖尿病の関係は強く、特にアジア人は欧米人に比べて体重が増えると糖尿病を発症しやすいとされています。

出典・参考文献

「統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド」

著者・発行元:日本精神神経学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会(監修) | 発行年:2020年5月

「糖尿病 高血糖・ヘモグロビンA1c・合併症 糖尿病治療の名医が教える最高の治し方大全」

著者・発行元:山本周嗣(発行者) | 出版社:文響社 | 発行年:2020

5. よくある質問(Q&A)

5-1. 統合失調症とはどんな病気ですか?

統合失調症は幻覚や妄想を主な症状とする精神疾患で、約100人に1人が発症する決して珍しくない病気です。

統合失調症は幻覚や妄想などを主な症状とする精神疾患です。発症のピークは10代後半から20代にあり、世界的に見てもおおよそ100人に1人がかかる、決して珍しくない病気とされています。現在の研究では発症率0.7%とされ、100人に1人よりは若干低い数値です。

5-2. どんな症状がありますか?

代表的な症状として、幻覚・妄想・まとまらない会話や行動・意欲低下などの陰性症状があります。

代表的な症状として、幻覚、妄想、まとまらない会話や行動、陰性症状があります。発症前にはうつ状態となることもあり、うつ病から統合失調症へ診断が変わることもあります。

5-3. どんな経過をたどりますか?

前駆期・初回エピソード・寛解と再燃・慢性期という経過をたどることが多く、服薬中断が再燃の最大の要因です。

統合失調症の経過は人によって様々ですが、全般的な経過として、前駆期、初回エピソード、寛解と再燃、慢性期に分けて理解することができます。前駆期には、発症数年前から不眠、物音や光に敏感になる、気分が落ち込む、誰かに噂されているような気がするなどの前兆となるサインが出ますが、本人も周りの人も気がつかないケースもあります。

5-4. どうして統合失調症になったのでしょうか。子育てが原因ですか?

遺伝的要因や周産期の要因に思春期のストレスが重なって発症すると考えられており、子育ての仕方が原因ではないことが分かっています。

「なぜ自分が」「なぜうちの子が」と、原因を知りたくなるのは自然なことです。統合失調症は、120〜140人に1人程度がかかる、決して特別な病気ではありません。原因については、いくつかの要素が重なって発症すると考えられています。

5-5. どのくらい治りますか?

治療を継続すれば約半数が「パーソナル・リカバリー」と呼ばれる自分らしい生活を取り戻せますが、治療を中断すると再発率は大きく上がります。

治るイメージは人によって異なるため、いくつかのパターンをご紹介します。治療を継続した場合、日常生活を通常通り行い、なんらかの社会的役割(福祉的な就労や家庭内家事)が行えるまで回復するケースが約半数あります。

5-6. どんな治療法が行われますか?

急性期には抗精神病薬による薬物療法が中心となり、通常2〜4週間程度で症状の改善がみられます。

統合失調症は幻覚や妄想などを主な症状とする病気で、こうした症状が現れたときや悪化したときに治療が始まることが多くあります。急性期とよばれる初回エピソードや再発時では薬物療法が中心となり、統合失調症では『抗精神病薬』と呼ばれる幻覚や妄想を抑える薬を使用します。

5-7. どうしたら再発予防ができますか?

症状が安定しても自己判断で服薬をやめず、薬物療法とリハビリテーションを組み合わせて継続することが再発予防につながります。

症状が良くなったら病気は治っていると考えて薬をやめたくなるのは、普通のことかもしれません。しかし、症状が安定しても内服を継続しないといけない病気があり、高血圧などと同様に、統合失調症も安定を維持するために内服の継続が必要です。

5-8. 結婚を考えているのですが、妊娠のことを考えると薬を飲み続けて大丈夫でしょうか

妊娠中も精神症状を安定させる薬の内服は基本的に推奨されており、薬剤選択に注意しながら主治医と相談して進めます。

統合失調症を患っている方でも、結婚し妊娠出産をされている方は、日本のみならず世界中にいます。その際、パートナーの方に病気を理解してもらえているか、妊娠にそなえて薬を整理できるか考えておく必要があります。

5-9. 社会人としてみられたいです

就労や一人暮らしを目指すには、まず規則正しい生活リズムを整えることが土台になります。

社会人として見られたいという希望は、就労ができるか、一人暮らしができるかといったことにつながり、自立したいということと同じ意味を持ちます。就労については、2012年に障害者自立支援法が成立後、急性期の症状が改善し慢性期に入ると、就労を支援するための制度が整ってきています。

5-10. 家族より:事実ではないことをよく言ってきます。どう対応したらいいでしょうか

本人のつらさにまず共感し、「幻聴さん」のように症状を外在化して捉える工夫も、本人・家族双方の助けになります。

急性期の後も幻聴や妄想が残存することがあり、特に現状が不本意であるほど妄想が膨らむ傾向にあります。「嫌がらせをされている」などの訴えには、まずは家族も話をよく聞いてみて、「そういうことが起こるとつらいよね」と共感することが大切です。

出典・参考文献

「統合失調症 あなたはどう答えますか?」

著者・発行元:池淵恵美(編集:笠井清登・村井俊哉・福田正人) | 出版社:Progress in medicine | 発行年:2021

「統合失調症」

著者・発行元:松岡洋夫(東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野) | 出版社:精神神経学雑誌(2007;109(2)) | 発行年:2007

「アジアにおける統合失調症の転機」

出版社:精神神経学雑誌 | 発行年:2014

「統合失調症の人が働くことを支援する・精神科医にできること」

出版社:精神神経学雑誌 | 発行年:2017

「統合失調症を持つ人々の家族をいかに地域精神医療の中で支えるか」

出版社:精神神経学雑誌 | 発行年:2019

「訪問支援で使える統合失調症情報提供ガイド 家族心理教育編」

「よくわかる最新医学 統合失調症」

著者・発行元:春日武彦(監修)・村松邦彦(編) | 出版社:主婦の友社 | 発行年:2005

関連Q&A

本セクションは池淵恵美(編)『統合失調症 あなたはどう答えますか?』(2021年)を参考に構成しています。

Q監視されていると確信している(妄想がある)友人に、どう受診を勧めればよいか?

A「それは思い込みだよ」と正面から否定しても、本人には受け入れがたく、かえって心を閉ざしてしまうことがあります。無理に説得しようとするのではなく、眠れていない・食欲がない・落ち着かないといった、本人自身も感じているつらさに目を向け、「眠れなくてつらそうだから、一度誰かに相談してみない?」というように、困りごとの解消を入り口に受診を提案してみるとよいでしょう。

統合失調症の代表的な症状については、「1. 統合失調症ってどんな病気?」および「5-2. どんな症状がありますか?」もあわせてご覧ください。

監修:久場禎三(沖縄中央病院 院長・精神科医/ラジオ番組「こころの架け橋」パーソナリティ)