🍽️ 摂食障害
摂食障害について
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このページでわかること
摂食障害は、病的なやせがあっても食べられない「拒食症」と、過食のスイッチが入り自分で止められなくなる「過食症」に大きく分けられます。いずれも本人の意思だけではコントロールできない病気であり、考え方の見直しや自己表現の練習、無理のない目標を立てた段階的な取り組みによって回復が可能です。
1. 摂食障害について
1-1. 摂食障害の基礎知識(拒食症・過食症の違い)
摂食障害は「拒食症」と「過食症」に大きく分けられ、どちらも自分の意思だけではコントロールできない病気です。
摂食障害は大きく「拒食症」と「過食症」の2つに分けられます。病的なやせがあっても食べられない状態を拒食症、病的なやせがなく過食が強く出る状態を過食症と呼びます。摂食障害は「行き過ぎたダイエット」ではなく、本人の意思だけではコントロールできない病気であるという点を理解することが、周囲が接するうえでも大切です。
病的なやせの目安は、標準体重の80%以下とされています。たとえば身長155cmの場合、標準体重は約52kgで、その80%にあたる41kg以下が病的なやせの目安です。拒食症では、痩せすぎているにもかかわらず体重を増やすことに強い恐怖心を抱き、実際の体重と自分がイメージする体型との間にズレ(ボディイメージの歪み)が生じます。痩せていることを周囲から心配されても認めようとせず、痩せていなければ自分に存在価値がないと感じてしまうことも特徴です。診断の目安として、月経が3回以上続けて止まる無月経の状態が挙げられます。
過食症は、病的なやせがない状態で、通常の「食べ過ぎ」とは異なる「過食のスイッチ」が入ったような大量の食事を、自分の意思で止められずに食べてしまう状態です。過食の後には嘔吐や下剤の乱用といった「埋め合わせ行動」がみられることも多く、過食中の記憶がはっきりしないという人もいます。診断の目安は、こうした過食が週2回以上、3か月以上続いていることです。過食症も「やせたい病気」であり、やせれば自分の価値が上がり、太れば価値が下がるという考え方が根底にあります。ダイエットによる飢餓状態がきっかけで過食のスイッチが入ることも多く、その場合はダイエットのリバウンドとして過食が習慣化してしまいます。
拒食症のある人は、体重を減らすことで安心感や達成感を得ており、自分ひとりで努力を重ねるタイプが多く、思春期に行き詰まった末に自尊心を保つ手段として拒食にたどり着くことが少なくありません。一方、過食症のある人は、ストレスに行き詰まったときに過食という方法で対処しており、「気持ちの晴れないネガティブな状態から逃れたい」という気持ちを過食によって麻痺させている側面があります。最初は拒食だけだった人が、後から過食も伴うようになることもあります。摂食障害になる人には、自分の意見や気持ちを表現することが苦手で、ストレスをためやすい性格の人が多いという共通点もみられます。
拒食症が続くと、無月経のほか、骨が軽くなって骨折しやすくなる骨粗鬆症、眠りが浅くなる睡眠障害、嘔吐による電解質異常からくる不整脈、低栄養による脳の萎縮(集中力低下や不安・焦りの増強)といった影響が現れます。人と一緒に食事ができなくなるなど、生活そのものが制限されていくことも少なくありません。過食症の場合は、過食が続くことで学校や外出が難しくなったり、過食にお金がかかることで経済的に困窮したりすることがあります。過食への罪悪感や肥満への恐怖から不安や焦りが強まり、日常生活に支障が出ることも多くあります。
1-2. 拒食症の治療
無理のない目標体重を決め、体重が増えることへの不安に少しずつ慣れていくことが治療の中心になります。
拒食症の治療では、過食症と同様に考え方の修正や自己表現の練習を行うことに加えて、肥満への恐怖に対して無理のない目標体重を決め、体重が増加することへの不安に少しずつ慣れていくことが必要になります。症状が重く生命の危険がある場合には入院が必要になることもあり、見守りのある環境で食事をとったり、必要に応じて栄養剤を使ったりしながら危機を脱する方法がとられます。
1kgの体重を増やすのに何か月もかかることが多く、治療全体には何年もかかることも珍しくありませんが、いったん標準体重の範囲に入ると体重の増加は落ち着いていくことが多いとされています。
拒食は不安の病気であり、その不安を和らげていくことが治療の中心になります。まず、拒食が「これまでのやり方が通用しなくなったために辿り着いたスタイル」であることを本人と家族が理解することが大切で、「もっと食べなさい」と伝えるだけでは不安を解消できず、かえって拒食にしがみつく結果になることもあります。いじめや、それまでの努力の方法が通用しなくなったことなど、拒食のきっかけとなる出来事がある場合も多いため、本人が生活の中で何に悩んでいるのかを知り、自分ひとりで抱え込まず人に相談し助けを求められる方法を探していくことが大切です。体重が増えることへの恐怖に対しては、少しずつ食べることに慣れていってもらうという地道な取り組みが必要になります。
1-3. 過食症の治療・対処法
考え方の見直しや自己表現の練習に加えて、自分を責めない視点や感情の受け止め方を身につけることが回復につながります。
過食症の治療では、ストレスをためやすい考え方を見直し、自分の気持ちや考えを上手に相手に伝える自己表現の練習をしていくことが有効とされています。過食を止める薬はないため、日常生活や食事の日誌をつけて、どのような考え方が過食につながっているのかを見つけていくことが治療の出発点になります。
「完璧にしなければならない」「完璧にできないならだめな自分だ」といった自分を過度に責める考え方を、さまざまな角度から検討し、より客観的で合理的な見方ができるようになることが目標です。あわせて、呼吸法など過食に代わるストレス対処行動を身につけていくことも重要です。
今の日本は、多くの女性が「やせたい」と感じ、小学生ですらダイエットをする時代であり、標準体重やそれ以下の体型の人でも「もっと痩せたい」と考えてしまいやすい、摂食障害になりやすい社会的な環境にあるといえます。過食は、自分を嫌いだと思う気持ちが積み重なったところに、ふとしたきっかけが加わって出現することが多く、そのきっかけ自体よりも、自分を嫌いになりやすいパターンに注目することが治療では重視されます。虐待を受けた経験や、両親の不仲を自分のせいだと感じていたこと、批判的な親や世間体を優先する親のもとで育ったことなど、自分を好きになれない背景を抱えているケースも少なくありません。自分の本心を人に伝えられず、はきはきしているように見える人でも肝心なことは言えないという対人関係のパターンが、ためこんだエネルギーとして過食症状にあらわれることもあります。
過食は、ストレスがたまったときにそれを解消する役割を果たしています。罪悪感や自責感、不安といった気持ちが積み重なって、気持ちの晴れない状態を引き起こし、それを何とかしようとして過食が出てくるという流れです。この晴れない気持ちが強まるきっかけの多くは、誰かとのやりとりや過去の出来事を思い出すことにあります。そして過食をしたことで「自分はだめだ」という自責感が生まれ、それがさらなる過食を引き起こすという悪循環に陥ります。この悪循環から抜け出すには、まず「過食をする自分を責めない」ことが最初の一歩になります。「ストレスを解消するために仕方なかった。過食のおかげで、モヤモヤした気持ちに押しつぶされずに済んでいる」というように、いったん自分を許容する視点を持つことが助けになります。あわせて、自分の気持ちを話すことが苦手で、不安やストレスを一人でためこんでしまう傾向があることも理解し、「他人にだめな人間だと思われないか」という不安を抱えながらも、自己表現の練習を繰り返し行っていくことが回復につながります。
過食のある人は、不安・怒り・罪悪感といったネガティブな感情を「よくないもの」「未熟な証拠」だと捉え、感じること自体を否定してしまいがちです。しかし、それを否定するほど「感じるべきではない気持ちを持っている」という罪悪感が新たな過食のエネルギーになってしまいます。そのため、ネガティブな感情が出てきたときには「そういう気持ちが出る状況に置かれているんだな」とそのまま認め、受け止めることが大切です。また、過食症のある人は他人との距離感に敏感で、親しくなるほど「相手が自分に侵入してくるのではないか」「断れずにどんどん追い詰められるのではないか」と不安になりやすい傾向があります。そうしたときは、無理に踏み込まれない自分なりの距離感を保つように、たとえば「気の持ちようでなんとかなる」という根性論を相手から押しつけられても、「気にかけてくれてありがとう、今はちょっと余裕がないからそのうち考えてみるね」とやんわり伝えて自分のペースを保つといった境界線の引き方も、不安をコントロールする助けになります。
摂食障害のある人は、治りたいという気持ちがある一方で、心の奥底では「病気から治ること」そのものを恐れている場合もあります。拒食や過食によって得ていた達成感やストレス対処の手段が、治ることでなくなってしまうという不安があるためです。摂食障害を治すというのは「症状をなくすこと」ではなく、「症状がなくても現実の生活を送っていけるようになること」を意味します。そのためには、拒食以外の方法で達成感を得たり、過食以外のストレス対処方法を身につけたりすることが必要です。拒食も過食も、新しい生活スタイルや新しい考え方を身につけることで回復が可能であり、あきらめずに時間をかけて治療していくことが大切です。
出典・参考文献
「焦らなくてもいい!拒食症・過食症の正しい治し方と知識」
「摂食障害の理解と対応―現代の思春期女性―」
「摂食障害の不安に向き合う―対人関係療法によるアプローチ―」
「拒食症・過食症を対人関係療法で治す」