🧠 認知症・高齢者の脳の病気

認知症・高齢者の脳の病気について

認知症・高齢者の脳の病気に関する記事(全10本)を1ページにまとめました。目次から気になる項目へジャンプできます。

このページでわかること

認知症は、アルツハイマー型・脳血管性・レビー小体型・前頭側頭型など原因によってタイプが異なり、それぞれ症状の現れ方やケアのポイントが異なります。近年はアルツハイマー型認知症に対する新薬(レカネマブ・ドナネマブ)による治療も始まっており、早期発見・診断の重要性が高まっています。認知症の前段階である軽度認知機能障害(MCI)の段階であれば、生活改善やトレーニングによって予防できる可能性があります。自動車運転をめぐる家族の対応や、認知症と間違われやすい高齢者てんかんについてもあわせて紹介しています。

1. 認知症について

1-1. 認知症とはどんな病気?

認知症は、脳の病気や障がいが原因で物忘れがひどくなったり、それまでできていたことができなくなったりする状態で、アルツハイマー病と脳血管障害が原因の7〜8割を占めます。

認知症とは、脳の病気や障がいが原因で物忘れがひどくなったり、それまでできていた身近なことができなくなったりする状態のことです。認知症を引き起こす病気にはさまざまな種類がありますが、もっとも多いのがアルツハイマー病で、次に多いのが脳梗塞や脳出血による脳血管障害です。

1-2. 認知症の中核症状

記憶障害・見当識障害・判断力の低下などの中核症状は、どのタイプの認知症でも現れ、ヒントがあっても思い出せない点が加齢による物忘れとの違いです。

認知症では、どのようなタイプであっても現れる「中核症状」と、人によって現れ方が異なる「BPSD(行動・心理症状)」があります。以前は「周辺症状」と呼ばれていましたが、現在はBPSDという呼び方が一般的なため、このページでも以降「BPSD(周辺症状)」と表記します。

1-3. BPSD(行動・心理症状)

不安・徘徊・幻覚妄想などのBPSD(周辺症状)は必ず出るわけではなく、環境や周囲の関わり方によって和らげることができます。

BPSD(周辺症状)は認知症の人に必ず現れるものではなく、不安・焦り・不眠・幻覚妄想・徘徊・攻撃的言動などとして、人によって異なる形で現れます。たとえば、少し目を離したすきに外へ出かけてしまう、話しかけても反応が返ってこないままぼんやりと過ごす時間が増える、大切にしまったお金や通帳が見当たらず誰かに取られたのではと思い込む、夕方になると自宅にいても「そろそろ家に帰らないと」と落ち着かなくなる、夜中に目を覚まして部屋の中を歩き回るといった様子が、BPSD(周辺症状)としてよく知られています。

1-4. 症状の現れ方(アルツハイマー型認知症を例に)

アルツハイマー型認知症は初発期・初期・中期・末期と段階的に進行し、それぞれの段階に合ったケアが求められます。

もっともよくみられるアルツハイマー型認知症を例にとると、症状は次のような段階を経て進行していきます。

1-5. 治療について(薬物療法)

中核症状には認知症治療薬、BPSD(周辺症状)には向精神薬を症状にあわせて使い分けます。

アルツハイマー型認知症は、お薬による治療で進行を遅らせることができます。現在はさまざまなタイプの認知症に対する薬が出ているため、症状や体質にあわせて内服を継続するとよいでしょう。飲み薬だけでなく皮膚に貼るタイプの薬もあるため、薬をうまく飲めない方にも使用できます。

1-6. 薬以外の治療法

音楽療法やレクリエーションなど、デイケア・デイサービスで受けられる薬以外のケアもあります。

薬物療法以外にも、音楽療法やレクリエーションによるリハビリなどがあります。主に認知症デイケアやデイサービスといった施設がこうした活動を行っているため、通える施設を探して利用するとよいでしょう。

1-7. よくある困りごとへの対応(同じ質問・物盗られ妄想)

同じ質問の繰り返しや物盗られ妄想には、否定せず共感しながら、初めてのつもりで対応することが基本です。

認知症は短期記憶障害(新しいことを忘れてしまうこと)のため、「ここはどこ?」「今何時?」「食事はまだ?」と同じ質問を何度も繰り返すことがあります。これが1日中続くため、介助者は「もうこれで3回目ですよ」「さっき説明したでしょう」と言いたくなってしまいますが、認知症の方は話した内容そのものを忘れてしまうため、自分が何度も同じことを聞いているという自覚がありません。

1-8. よくある困りごとへの対応(不安・うつ状態・無関心)

不安やうつ状態、無関心な様子には、共感を示しながら非難や批判をしないことが大切です。

「ここはどこ?」「私はこれからどうなるの?」といった不安の訴えには、話を聴きながら共感し、「心配しなくても大丈夫だよ」というような声かけをするとよいでしょう。「何もできなくなった」「ダメになった」「家族に迷惑をかけている」といったうつ状態のような訴えには、共感しながら「そう思ってしまうようだけど、できていることもあるよ」とできていることを伝えます。

1-9. 家族の心理と支える工夫

家族自身もさまざまな心理状態を行き来するのが実情であり、一人で抱え込まず社会資源や家族会を活用することが大切です。

家族の多くは、認知症という診断を受けた後、認知症が進行性で治るものではないと知って落胆することが多いものです。認知症は徐々に進行し、家族の顔さえも認識できなくなって、さらに悲しむこともあります。しかし、関わり方や環境の工夫によって、病気の進行を緩やかにしたり、質の高い生活を送れたりすることを学ぶことができます。

出典・参考文献

「認知症高齢者の心がわかる本」

著者・発行元:平澤秀人 | 出版社:講談社 | 発行年:2010

「地域で支える家族のための認知症Q&A」

著者・発行元:新井平伊(監修) | 出版社:つちや書店 | 発行年:2017

2. アルツハイマー型認知症

2-1. MCIって何?――物忘れと認知症のあいだ

軽度認知障害(MCI)は認知症の前段階で、国内では65歳以上のおよそ15%が該当すると推計されており、早期に気づくほど新薬レカネマブなど治療の選択肢が広がります。

物忘れが増えたものの、認知症とまでは言えない、という状態があります。これを「軽度認知障害」、略してMCIと呼びます。日常生活に大きな支障はないものの、記憶などの認知機能が年齢相応より低下している段階です。

2-2. アルツハイマー病はどうして起こるのか――アミロイドとタウの正体

アルツハイマー病の脳ではアミロイドベータとタウという2種類のタンパク質が異常に蓄積し、発症の20年も前から水面下で変化が始まっているとされています。

アルツハイマー病の脳には、大きく3つの特徴があるとされています。脳全体が萎縮すること、そして「老人斑」と「神経原線維変化」という2種類のゴミが溜まることです。老人斑の主な成分は、アミロイドベータというタンパク質の断片です。

2-3. その物忘れ、老化?それとも認知症のサイン?

加齢による物忘れはヒントで思い出せることが多い一方、認知症による物忘れは体験そのものが抜け落ちる点が異なり、「振り返り徴候」などが見分けの手がかりになります。

加齢による物忘れと認知症による物忘れは、似ているようで質が異なります。加齢による物忘れは、体験した出来事の一部を忘れるものの、ヒントを与えれば思い出せることが多いものです。一方、認知症による物忘れは体験そのものの記憶が抜け落ち、ヒントを与えても思い出せない場合があります。

2-4. 物忘れの外来では何をするのか――診断までの流れ

認知症の診断は問診に加え認知機能検査・画像検査・血液検査を組み合わせて行われ、専門的な検査が必要な場合、当院では専門の医療機関へご紹介しています。

物忘れ検査のため外来を受診すると、まず本人と家族の双方から話を聞くところから始まります。いつ頃からどのような変化があったか、日常生活で困っていることは何かを丁寧に確認します。これは、ご本人の話だけでは気づきにくい変化を、家族の視点から補うためです。

2-5. 新薬『レカネマブ』とは何か――仕組みと効果

レカネマブは脳に溜まったアミロイドベータを取り除く点滴薬で、軽度認知障害と軽度の認知症の方が対象です。当院では投与判断に必要な検査体制がないため専門の医療機関にご紹介しています。

レカネマブは、アルツハイマー病の原因の一つとされる、脳に溜まったアミロイドベータというタンパク質を取り除くことを目的とした薬です。体重1kgあたり10mgの用量を、2週間に1回、約1時間かけて点滴で投与し、抗体がアミロイドベータに結合することで、脳内からの除去を促す仕組みを持っています。

2-6. アルツハイマー病の新薬レカネマブの副作用と、知っておきたい注意点

レカネマブでは脳のむくみや出血(ARIA)という副作用に注意が必要で、定期的なMRI検査と専門医による経過観察を行いながら治療を進めます。

これまでの放送では、物忘れの早期発見から、物忘れ外来での診断の流れ、そして新しい治療薬レカネマブについてお話ししました。レカネマブは、記憶などに軽い問題が出始めた軽度認知障害の段階から、ごく初期の認知症までの方を対象に、脳に溜まったアミロイドベータを取り除く薬剤です。

2-7. レカネマブの対象と分かったら――本人と家族で考えること

検査結果を本人に伝えることが一律に負担になるとは限らないという報告もあり、治療を始める前に本人・家族・医療者でしっかり話し合うことが大切です。

検査の結果、レカネマブの対象となる可能性があると分かったとき、家族の間でまず悩むのが「本人にどう伝えるか」ということです。「アルツハイマー病になる可能性が高い」と本人に伝えることは、本人を不安にさせ、傷つけてしまうのではないかと案じる家族は少なくありません。

2-8. 薬だけに頼らない――認知症予防のための生活習慣

国際的な報告では14の生活習慣要因への対処で認知症のおよそ45%は発症を遅らせたり防いだりできる可能性があるとされ、飲酒・食事・運動・睡眠・つながりが基本になります。

認知症は、薬だけで防げるものではありません。国際的な医学誌Lancetに発表された2024年の報告によると、14の要因が「コントロール可能な危険因子」として示され、これらに対処することで認知症のおよそ45パーセントは発症を遅らせたり防いだりできる可能性があるとされています。

2-9. 家族が認知症と診断されたら――精神症状や行動変化との向き合い方

徘徊や妄想などの行動心理症状(BPSD)への対応は、薬に頼らない工夫を優先するのが原則で、家族だけで抱え込まず周囲の専門職を頼ることが大切です。

認知症では、記憶障害そのものだけでなく、徘徊や妄想、興奮、暴言といった、周囲を悩ませる症状が現れることがあります。これらは行動心理症状(BPSD)と呼ばれ、本人の性格や環境、周囲との関わり方によって現れ方が大きく変わります。

2-10. これからの認知症医療――新しい薬と検査の広がり

血液検査によるアミロイドベータ推定技術や、レカネマブに続く新薬ドナネマブの登場など、早期発見・治療の選択肢は広がりつつあります。

これまで見てきたように、アルツハイマー病は症状が現れる15年から20年も前から、脳の中で変化が始まっています。この早い段階でアミロイドベータの蓄積を見つけ、治療や生活習慣の改善につなげようという考え方を、先制医療と呼びます。

出典・参考文献

「認知症医療革命 新規アルツハイマー病治療薬の実力」

著者・発行元:伊東大介 | 出版社:扶桑社 | 発行年:2024

「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究(JPSC-AD研究)」

著者・発行元:厚生労働省(九州大学研究班) | 出版社:(Web公開) | 発行年:2024

「認知症とは?認知症をきたす主な病気」

著者・発行元:日本認知症学会 | 出版社:学会公式サイト

「Can the clinical sign "head-turning sign" and simple questions in "Neucop-Q" predict amyloid β pathology?」

著者・発行元:Daté Y, et al. | 出版社:Alzheimer's Research & Therapy | 発行年:2024

「認知症疾患診療ガイドライン2017」

著者・発行元:日本神経学会(監修) | 発行年:2017

「認知症に関する脳脊髄液・血液バイオマーカーの適正使用ガイドライン 第3版」

著者・発行元:日本認知症学会ほか6学会(監修) | 発行年:2025

「最適使用推進ガイドライン レカネマブ(遺伝子組換え)」

著者・発行元:厚生労働省 | 出版社:(Web公開)

「The psychological impact of disclosing amyloid status to Japanese elderly: a preliminary study on asymptomatic patients with subjective cognitive decline」

著者・発行元:Wake T, Tabuchi H, Funaki K, Ito D, Yamagata B, Yoshizaki T, Kameyama M, Nakahara T, Murakami K, Jinzaki M, Mimura M | 出版社:Int Psychogeriatr | 発行年:2017

「Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet Standing Commission」

著者・発行元:Livingston G, et al. | 出版社:Lancet | 発行年:2024

「Association Between Dietary Fish and PUFA Intake in Midlife and Dementia in Later Life: The JPHC Saku Mental Health Study」

著者・発行元:Nozaki S, et al. | 出版社:J Alzheimers Dis | 発行年:2021

「A longitudinal cohort study demonstrating the beneficial effect of moderate consumption of green tea and coffee on the prevention of dementia: The JPHC Saku Mental Health Study」

著者・発行元:Koreki A, et al. | 出版社:J Alzheimers Dis | 発行年:2025

「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン 第3版」

著者・発行元:日本認知症学会ほか6学会(監修) | 発行年:2025

「最適使用推進ガイドライン ドナネマブ(遺伝子組換え)」

著者・発行元:厚生労働省 | 出版社:(Web公開)

「認知症の人の自動車運転免許に関する意見」

著者・発行元:日本神経学会・日本神経治療学会・日本精神神経学会・日本認知症学会・日本老年医学会・日本老年精神医学会 | 発行年:2026

3. レビー小体型認知症

3-1. レビー小体型認知症とは

レビー小体型認知症はアルツハイマー型に次いで多い認知症で、幻視・パーキンソン症状・認知機能の変動・レム睡眠行動障害を特徴とします。

認知症といえばアルツハイマー型認知症が有名で、認知症の約半数を占めます。それに次いで多いのがレビー小体型認知症で、認知症の約2割を占め、国内では50〜90万人程度と推計されています。三大認知症は、アルツハイマー型認知症(約50%)・レビー小体型認知症(約20%)・脳血管性認知症(約15%)です。

3-2. レビー小体とは

脳内に出現する「レビー小体」というタンパク質が大脳皮質に広がることで症状が現れ、初期には物忘れよりうつや幻視が目立ちます。

脳内に「レビー小体」という特殊なタンパク質が出現し、これが大脳皮質(脳の表面)に広範囲に出現すると、レビー小体型認知症の症状が現れます。アルツハイマー型認知症とは病変が異なるため、初期から中期においては症状が異なる点が多くあります。

3-3. 診断が難しい理由

物忘れが目立たず、認知機能の日内変動もあるため、初期には見逃されやすく他の疾患と間違われやすい病気です。

物忘れが目立たず、さまざまな症状が出現するレビー小体型認知症は、初期には診断が難しいことが多い病気です。CTやMRIといった頭部の画像検査でも、アルツハイマー型認知症にみられるような脳の萎縮(脳のやせ)が目立たず、物忘れ検査でも正常値を示すことが多いため、初期には見逃されやすい傾向があります。

3-4. 正しい診断を受けるために

本人と家族がそれぞれの視点から症状を伝えることが診断の決め手になり、神経心理検査と画像検査が行われます。

診断は神経内科や認知症診療を行っている精神科で行われます。特徴的な症状の有無が診断のポイントとなるため、本人だけでなく家族と一緒に受診して症状を伝えることが重要です。本人からは現在困っている症状(うつや幻視、パーキンソン症状など)を、家族からは普段の様子や寝ているときの様子(寝言がひどくなっていないか、寝相が悪く体を頻繁に動かしていないか、ときに暴れることもあるか)を伝えると、診断につながりやすくなります。

3-5. 治療について

レビー小体自体を取り除く治療法はまだありませんが、症状ごとの薬物療法とケアの工夫で生活の質を維持できます。

レビー小体型認知症の治療では、症状の進行を抑えることが大きな方針となります。今のところ、脳にできた原因物質であるレビー小体を消したり、神経を元通りにしたりする治療法は見つかっていません。しかし、困っている症状を改善させたり、ケアを工夫したりすることで、本人の困りごとを解消し生活の質を維持することができます。

3-6. 幻視・錯視への対応

幻視は本人には現実として見えているため、強く否定せず「自分には見えないけれど」と共感的に受け止めることが基本です。

レビー小体型認知症では、視覚に関係する後頭葉の血流低下により、視覚に関する異常がよくみられます。幻視は、ないはずのものが、そばにいる人には見えないのに、本人にははっきりとありありと見える症状です。「小さい女の子が目の前にいるけどどこの子?」「亡くなった親戚がうちに来ている」といった訴えがみられ、誤認(見間違い)が幻視のきっかけになることも少なくありません。

3-7. 転倒しやすさへの対応

アルツハイマー型の約10倍転びやすいとされ、環境の整備と声かけの工夫で転倒を防ぎます。

レビー小体型認知症では、動作緩慢、筋肉のこわばり、小刻み歩行といったパーキンソン症状が現れるのが特徴です。パーキンソン症状が出ると歩きづらさが出てきますが、最初の一歩が踏み出せない場合は床に目印をつけてあげると歩きやすいと言われています(平坦な床では歩行に支障をきたす一方、階段を登ったり障害物をまたいだりすることはできるという特徴を利用したものです)。

3-8. 自律神経症状・薬への過敏性

起立性低血圧などの自律神経症状に加え、抗精神病薬に対する過敏性があるため、薬は少量から慎重に調整します。

自律神経症状も、レビー小体型認知症によくみられる症状です。自律神経には、活動する「交感神経」と休む「副交感神経」の2つがあり、交感神経は緊張したときや興奮したときに血管を収縮させて血圧や脈拍を上げ、副交感神経はリラックスしたときや睡眠状態のときに血管を拡張させて血圧や脈拍を下げます。

3-9. うつ症状・パーキンソン症状への対応

約7割にうつ症状がみられ、励ましより安心できる環境づくりが大切で、パーキンソン症状には歩行介助の工夫が役立ちます。

レビー小体型認知症の発症前や初期にはうつ病の症状が出現しやすく、約7割の人がうつ症状をもっているといわれています。気分がふさぎ込み、悲観的でゆううつな状態がみられ、「私は役に立たない人間だ、死にたい」といった自己否定的な発言や、やる気が出ない、興味関心が減る、食事をとらなくなる、引きこもるといった様子もよくみられます。

3-10. レビー小体型認知症と付き合うために

当事者の樋口直美さんは「病気を知り、ストレスを避け、笑うこと」の大切さを語っており、家族は本人のプライドを傷つけない対応が求められます。

レビー小体型認知症の当事者であり情報発信をしている樋口直美さんは、「私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活」という本を書かれています。樋口さんは、うつが初発症状で6年ほどはうつの治療が行われ、その後幻視が出現してレビー小体型認知症と診断されたそうです。

出典・参考文献

「私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活」

著者・発行元:樋口直美 | 出版社:ブックマン社 | 発行年:2015

「レビー小体型認知症がよくわかる本」

著者・発行元:小阪憲司(監修) | 出版社:講談社 | 発行年:2017

「レビー小体型認知症の介護がわかるガイドブック」

著者・発行元:小阪憲司・羽田野政治 | 出版社:メディカ出版 | 発行年:2010

「レビー小体型認知症の診断と治療」

著者・発行元:小阪憲司(編) | 出版社:harunosora | 発行年:2014

4. 前頭側頭型認知症

4-1. 前頭側頭葉変性症とは

前頭側頭葉変性症は物忘れよりも性格変化や行動異常が目立つため、精神疾患と間違われやすい認知症です。

前頭側頭葉変性症とは、脳の前方に位置する前頭葉と、その後ろ側の側頭葉が少しずつ萎縮していくことで発症する認知症の一種です。もの忘れが目立つ一般的な認知症のイメージとは異なり、性格が変わってしまったり、対人関係でのトラブルや行動面の異常が先に現れたりする点が特徴です。

4-2. 前頭側頭葉変性症の3つのタイプ

萎縮する部位によって前頭側頭型認知症・意味性認知症・進行性非流暢性失語症の3つに分類されます。

前頭側頭葉変性症は、症状の出方によって①前頭側頭型認知症、②意味性認知症、③進行性非流暢性失語症の3つに分類されます。それぞれ脳の萎縮する部位が異なり、その部位に合致した症状が現れることで分類されます。

4-3. 前頭側頭型認知症の症状

45〜65歳頃の比較的若い年齢で発症し、社会性の欠如や抑制の効かなさ、同じ行動の繰り返しなどが特徴です。

前頭側頭型認知症は、比較的若い初老期(45〜65歳頃)に発症することが多く、他の認知症と比べると50代など比較的早期に発症する傾向があります。脳の中で前頭葉は「人格・社会性・言語」を、側頭葉は「記憶・聴覚・言語」を主につかさどっているため、これらが正常に機能しなくなることで次のような特徴的な症状が現れます。

4-4. 前頭側頭型認知症の診断と治療

問診と画像検査で診断され、有効な根本治療はまだないため症状に応じた対症療法が中心となります。

前頭側頭型認知症が疑われる場合、まず「問診」を行い、特有の症状が出ているかを確認します。このとき本人以外の家族や本人の様子を知る人にも同席してもらい、自宅での様子を客観的に聞くことで診察を進めます。問診の結果、疑いがある場合は、アルツハイマー型認知症と区別するため頭部CTやMRIによって前頭葉や側頭葉前部に萎縮があるかを調べます。

4-5. 意味性認知症の症状

言葉は流暢に話せても言葉の意味がわからなくなる「語義失語」が特徴的な症状です。

意味性認知症の言語症状としては、聞かれた言葉の「意味」がわからなくなり、聞き返してしまうという特徴があります。たとえば「かばんを取って」と頼まれても、「かばんって何のことですか?」と逆に尋ね返し、周囲を戸惑わせてしまうことがあります。

4-6. 薬物療法・非薬物療法

アルツハイマー型認知症の薬の効果は確立していない一方、症状にあわせた薬物療法と、こだわりを活かした作業療法的アプローチが役立ちます。

薬物療法については、アルツハイマー型認知症で使われるドネペジル・ガランタミン・リバスチグミンといった薬剤が前頭側頭型認知症にも同じように効果を示すかどうかは、はっきりとはわかっていません。それどころか、精神症状を悪化させてしまったという報告もあります。

4-7. 前頭側頭型認知症のケアの心構え

急激な変化を避けたワンパターンな生活を保ち、なじみの関係を築きながら本人の「持っている力」を活かすことが大切です。

前頭側頭型認知症のケアでは、急な変化や強い刺激に弱いという特性を踏まえ、できるだけ決まったパターンで日々を過ごせるようにすることが望ましいとされています。病気の比較的早い段階から性格が変わり、周囲への配慮を欠いた自己中心的な行動が目立つようになるため、施設や自宅でこだわりの強い行動をめぐってトラブルになることもあります。

4-8. 意味性認知症のケアの心構え

言葉の数が減っても発話意欲を尊重し、感情のこもった声かけやイラスト・写真の活用がコミュニケーションを支えます。

意味性認知症が進行すると、話せる言葉の数がだんだん少なくなり、決まった短い言葉を繰り返すことが多くなります。話の内容がうまく伝わらないときでも、本人が話そうとする気持ちを大切にし、周囲がその発話にしっかりと応えようとする姿勢を持つことが重要です。

出典・参考文献

「前頭側頭型認知症&意味性認知症 こんなときどうする保存版」

著者・発行元:大阪市福祉局高齢者施策部高齢福祉課(認知症施策グループ)ほか | 出版社:大阪市福祉局高齢者施策部高齢福祉課 | 発行年:2020

「前頭側頭型認知症介護者・ご家族へ」

著者・発行元:国立病院機構 菊池病院

5. 認知症高齢者の自動車運転

5-1. 高齢運転者の現状

高齢運転者の増加とともに死亡事故の割合も増加傾向にあり、道路交通法の改正が続けられています。

高齢化が進むにつれて、車を運転する高齢者の数も増え続けています。警察庁の統計では、75歳以上で免許を持つ人は平成29年(2017年)の時点でおよそ540万人にのぼりました。年齢層ごとの死亡事故率をみると、85歳以上がもっとも高く、10代がこれに続き、80〜84歳、75〜79歳という順になっています。

5-2. 運転が困難となる代表的な4つの認知症

アルツハイマー病・血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症は、それぞれ異なる形で運転に影響します。

認知症は早い段階で診断がつけば、物忘れや妄想などの症状だけでなく、火の元の管理や運転免許の返納といった生活面の課題にも余裕を持って備えることができます。代表的な4つの認知症は、それぞれ運転への影響の現れ方が異なります。

5-3. 認知症と自動車運転の実態

認知症の疾患別に事故率が異なり、もっとも高いのは前頭側頭型認知症で、初期段階でも運転を継続してしまう方が少なくありません。

交通事故全体の件数はこの10年で大きく減ってきた一方、65歳以上のドライバーが起こす事故は思うように減っておらず、高速道路の逆走など認知機能の低下が疑われる事故も報道されるようになっています。認知症の人がどのように運転を続けているかを調べた調査では、診断を受けた後も運転をやめないケースが数多く見つかっています。

5-4. 自動車運転に関する法律・認知機能検査

道路交通法では認知症と判明すると免許の取り消し・停止ができると定められ、75歳以上には認知機能検査が義務付けられています。

法律上、運転者が認知症と判明すると、都道府県の公安委員会は免許を取り消したり、一時的に効力を止めたりすることができます。治る見込みがなければ免許は取り消され、半年以内に回復する可能性があれば、その間は効力停止という扱いになります。

5-5. 運転する目的や意味への理解

運転を中止するには、本人にとって運転が何を意味するのか(移動手段か、楽しみ・生きがいか)を理解することが第一歩です。

長年運転してきた方が認知症になり、車を手放さなければならなくなったとき、すんなり受け入れられることはあまり多くありません。中止をスムーズに進めるカギは、その人にとって運転がどんな意味を持っているのかを理解することにあります。

5-6. 運転している人が認知症になったとき

早めに正確な診断を受け、本人・家族・医師で話し合いながら、運転の代わりとなる手段を一緒に探すことが大切です。

車を運転している家族に「もしかして認知症では」と感じる様子があれば、まず医療機関で正しい診断を受けることが出発点になります。ひと口に認知症といっても種類によって現れる症状は異なるため、診断の結果とあわせて、運転にどう影響するのかを担当医から具体的に聞いておくとよいでしょう。

5-7. 運転をやめない場合の対応

信頼している第三者から伝えてもらう、鍵を預かるなどの工夫のほか、最終手段として医師から公安委員会への届け出制度もあります。

家族がどれだけ強く訴えても、運転をやめてくれないことは珍しくありません。自分の能力が落ちていることに気づけないまま、認知症であること自体を認めず、中止の話を受け入れないケースもあります。そんなときはまず、なぜ運転を続けたいのかという本人の言い分にじっくり耳を傾けることから始めましょう。

5-8. 運転中止後の生活支援

移動支援サービスや地域の協力を活用しながら、運転に代わる生活の手段を早めに整えていくことが望まれます。

バスや電車が少ない地域に住んでいる場合、同居家族がいれば買い物のたびに付き添うといった工夫が考えられますし、一人暮らしや高齢者だけの世帯であれば近所の人や友人に移動を手伝ってもらえないか頼んでおくのも一つの方法です。食材や日用品を届けてくれる宅配業者、地域独自の移動支援や外出支援の仕組みがある場合もあるので、市町村の窓口で聞いてみるとよいでしょう。

出典・参考文献

「認知症高齢者の自動車運転を考える家族介護者のための支援マニュアル第2版」

著者・発行元:荒井由美子(執筆代表・国立長寿医療研究センター長寿政策科学研究部) | 出版社:国立長寿医療研究センター

「高齢者の運転問題と対策」

著者・発行元:成本迅(心と社会No.178) | 発行年:2019

「臨床医のための高齢者と認知症の自動車運転」

著者・発行元:上村直人・池田学(編著) | 出版社:中外医学社 | 発行年:2018

「高齢運転者の交通事故防止対策に係る警視庁の取り組みについて」

著者・発行元:警視庁

「認知症と自動車運転・治療的対応からケアまで」

著者・発行元:上村直人(神経治療34) | 発行年:2017

6. 認知症予防

6-1. 認知症予防への関心の高まりと軽度認知機能障害(MCI)

軽度認知機能障害(MCI)の段階であれば予防や回復の可能性があり、認知症になってからでは元に戻らない点が重要です。

高齢化が進むなか、認知症への社会的な注目は年々高まっています。厚生労働省の推計では、65歳以上で認知症を抱える人は2020年時点でおよそ600万人、2025年には700万人規模に達するとされ、これは高齢者のおよそ5人に1人にあたる数字です。

6-2. 「年齢相応の物忘れ」と「病的な物忘れ」の境界

体験の一部を忘れる「年齢相応の物忘れ」と、体験そのものを忘れる「病的な物忘れ」の境界にあたるのがMCIです。

MCIは、加齢によるふつうの物忘れと、認知症と呼べるレベルの物忘れとの、ちょうど中間に位置する状態といえます。

6-3. 認知症と診断されるポイント

認知機能の低下により日常生活に継続的な支障が出ていることが診断のポイントで、MCIの段階なら脳にはまだ回復の余力があります。

認知症だと判断される決め手になるのは、記憶力・言葉の理解・推理力・段取りを組む力・空間の把握力といった認知機能の低下によって、日常生活に無視できない支障がずっと続いていることです。脳が萎縮しているかどうかも判断材料の一つにはなりますが、発症初期の段階では画像上に目立った変化が見られないこともあります。

6-4. 受診先と診断の流れ

かかりつけ医や物忘れ外来などに相談し、問診と心理検査・画像検査を通じて診断が行われます。

「もしかして認知症では」と気になり始めたときは、まずかかりつけの医師に相談し、専門の診断を受けられる先を紹介してもらうのが近道です。かかりつけ医が認知症サポート医であれば、その場で診断してもらえることもあります。

6-5. 予防対策の3本柱

生活習慣の見直し・脳を鍛えるトレーニング・薬による対応の3本柱で取り組むことが、認知機能の維持・向上につながります。

MCIと診断されたら、そこから認知症予防に本格的に取り組むことができます。柱になるのは、生活習慣の見直し・脳を鍛えるトレーニング・薬による対応の3つです。

6-6. 認知症を防ぐ要因・進行させる要因

食事・運動・社会交流といった防御要因と、運動不足・生活習慣病などの危険要因を知り、本人が楽しめる形で生活に取り入れることが大切です。

発症を遠ざける方向に働くとされているのは、魚を積極的に食べる、ビタミン類や葉酸をしっかり摂る、オリーブオイル・全粒穀物・野菜・果物・豆類・ナッツ・魚を中心とした地中海式の食事、お酒はほどほどにとどめる、体を動かす習慣を持つ、人との付き合いを絶やさず知的好奇心を刺激する趣味を続ける、といった生活の要素です。逆に発症のリスクを高めるとされるのが、人付き合いの少なさ、運動不足、喫煙、飲みすぎ、脂肪分の摂りすぎをはじめとする過食、ビタミン不足、生活習慣病、うつ病、脳血管の病気、成人後の頭部外傷などです。

6-7. 食事の工夫

魚・野菜・緑茶を多く含む食生活が、認知症の発症リスクを下げると報告されています。

長生きしている人たちの食生活を調べると、魚・野菜・緑茶をよく口にする人ほど、認知症になりにくい傾向があると報告されています。魚の脂に含まれるDHAやEPAといった不飽和脂肪酸は、脳の構成成分としても多く、神経細胞間の情報のやり取りを円滑にする働きがあるとされます。

6-8. 運動と知的刺激

有酸素運動や筋トレに加え、2つのことを同時に行う「二重課題」が脳を効果的に刺激します。

体を動かすこと自体に、認知機能を保つ効果があります。筋力やバランス感覚が衰えている人は、そうでない人に比べて発症リスクがおよそ3倍になるという報告もあります。具体的には、息が弾む程度の早歩きのような有酸素運動、椅子を支えに無理なく行える全身の筋力トレーニング、片足立ちや一直線歩行のようにバランス感覚を養う運動などが役立ちます。

6-9. その他の生活習慣の工夫

読書や園芸、楽器演奏、日記など、日常に取り入れやすい工夫も認知症予防に役立ちます。

ほかにも、日常のなかで気軽に取り入れられる工夫がいろいろあります。

出典・参考文献

「まだ間に合う!今すぐ始める認知症予防 軽度認知障害(MCI)でくい止める本」

監修:朝田隆 | 出版社:講談社(健康ライブラリー イラスト版) | 発行年:2014

「もしかして認知症? 軽度認知障害ならまだ引き返せる」

著者:浦上克哉 | 出版社:PHP研究所(PHP新書) | 発行年:2023

7. 認知症と間違われやすい病気(高齢者てんかん)

7-1. 高齢者てんかんとは

高齢者てんかんは65歳以上で新たに発症するてんかんで、加齢に伴う病気のひとつであり、静かで地味な発作が特徴です。

てんかんというと子どもの頃に発症する病気というイメージを持つ人が多いかもしれませんが、年齢を重ねてから初めて発症するタイプも存在します。それが高齢者てんかんで、主に65歳を過ぎてから発症し、幼少期からの持病というわけではありません。

7-2. てんかんの仕組みと症状

てんかんは脳の神経細胞が異常に興奮することで起こり、けいれんを伴わない発作もあります。

てんかんは脳の病気の一種です。脳の外傷や腫瘍、奇形といった構造的な原因がある場合もあれば、そうした原因が見当たらない場合もありますが、いずれのケースでも発作時には脳波に異常な波形が現れるという共通点があります。

7-3. 高齢者てんかんの発症年齢・症状・発症率

高齢者てんかんの発症率は従来のてんかんより高く、介護施設では6.8%という報告もあるものの、見逃されやすい疾患です。

高齢者てんかんの発症は65歳以上が中心ですが、50代で発症するケースも見られます。子どもの頃に発症する従来型のてんかんの発症率が人口の0.8〜1%程度(およそ100人に1人)であるのに対し、65歳以上に限ると発症率はおよそ2%近くまで上昇し、従来型より高い水準にあります。

7-4. 認知症と間違われやすい理由

意識混濁や受け答えの乱れが認知症と似ているため誤診されやすく、発作後は通常の本人に戻る点が認知症との違いです。

高齢者てんかんは、それまでまったくてんかんと縁のなかった人にも起こり、症状としては激しいけいれんではなく軽い意識の混濁として現れます。ぼんやりして受け答えがちぐはぐになる、話しかけても反応が返らない、直前の行動を覚えていないといった様子から、認知症と誤解されるケースが少なくありません。

7-5. 高齢者てんかんを疑う症状チェックリスト

動作が突然止まって反応がなくなる、口や手をもぞもぞ動かすといった様子が繰り返しみられたら、脳波検査を受けることが勧められます。

次のような様子が繰り返し見られる場合は、高齢者てんかんの可能性を念頭に置き、脳波検査のできる医療機関(神経内科、脳神経外科、脳波検査に対応した精神科病院など)を受診することをおすすめします。

7-6. 治療について

抗てんかん薬で発作をコントロールでき、自分に合った薬をみつけることが治療の基本です。

てんかんの発作は、大脳の神経細胞が異常に興奮し、誤った電気信号を周囲に送ってしまうことで起こります。抗てんかん薬は、この脳の異常な興奮を抑えて発作をコントロールするための薬です。現在は古くから使われてきた薬剤に加え、新しいタイプの抗てんかん薬も登場しており、種類は豊富にあります。

7-7. 高齢者てんかんと診断されたときの生活上の注意点

入浴・調理・運転など、発作時に危険が及びやすい場面ごとに具体的な注意点があります。

高齢者てんかんの治療は薬による発作のコントロールが基本ですが、自分に合う薬にたどり着くまでには時間がかかります。薬の効果が安定するまでの間は、次のような点に気を配りましょう。

7-8. 治療開始後に気をつけたいこと

治療開始直後は副作用や発作が起こることがあるため、家族の観察情報を伝えながら根気強く薬を調整していきます。

治療を始めたばかりの時期は、体がまだ薬に慣れていないために副作用が出たり、血中の薬の濃度が十分でないために発作が起きたりすることがあります。時間をかけて量や種類を調整していけば、多くの場合は発作を抑えられるようになりますが、その過程でも通院のたびに気をつけたいことがあります。

出典・参考文献

「そのとき何が起きていたのか!! 患者と家族の体験談でわかる『高齢者てんかん』のすべて」

著者:久保田有一 | 出版社:アーク出版 | 発行年:2017

関連Q&A

以下のQ&Aは、新井平伊(監修)『地域で支える家族のための認知症Q&A』(つちや書店、2017年)を参考に構成しています。

Q認知症になった家族と、日々どんな心構えで接すればよいでしょうか?

A記憶力・判断力が落ちても感情や心はなくならないため、これまで通り愛情をもって接する。自尊心を傷つけない、子供扱いしない、笑顔を忘れない、ゆっくりはっきりシンプルに話す、失敗を責めない、できることは本人にやってもらう、介護者は完璧を目指さず「60点介護」でよい。

Q本人が病院に行くのをいやがります。どう対応すればよいでしょうか?

A認知症であることを認めたくない気持ちから受診を拒否することがある。早期発見・早期治療で進行を緩やかにできることを説明し、「ずっと元気でいてほしいから受診してほしい」という家族の気持ちを伝えるとよい。孫から話してもらうと納得するケースも多い。

Q薬の飲み忘れや二重に飲んでしまうことが続いています。どうすればよいですか?

A本人だけに任せず、1回ごとに薬を入れるポケット付きカレンダーや市販の服薬ボックスを利用する。訪問看護を利用すると薬のセットや服薬確認をしてもらえる。

Q見慣れたはずの近所で迷ってしまうことが増えました。対応のコツはありますか?

A通いなれた場所でも自分のいる場所がわからなくなり迷うことがある。周囲の様子がわかりやすい明るい時間に外出してもらい、迷うことが増えてきたら一緒に出かけるようにする。近所の人に協力を依頼することも大切。

Q自宅にいるのに、夕方になると「そろそろ帰らないと」と言い出します。

Aやわらかく声をかけて外に出るのを引き止める。「お茶を入れますから飲んでいきませんか」など、安心していられる居場所をつくってあげるとよい。

Q孫の顔を見ても誰かわからず、「どちらさまですか」と聞かれるようになりました。

A「この人は誰?」と記憶を試すようなことはせず、自分から「孫の○○だよ」と声をかける。名前や家族であることを忘れても、親身に介護している人への感謝の気持ちは失われない。新たに出会い直す気持ちで接するとよい。

Q粗相をした後、下着や衣類を隠してしまうため、後始末に困っています。

A恥ずかしさや叱られたくない気持ちから隠して忘れてしまっている。プライドを傷つけず責めないように「掃除と洗濯をしておきますから大丈夫ですよ」と声をかける。排尿排便のリズムを把握し早めのトイレ誘導も有効。

Qつい語気が強くなってしまうとき、どう気持ちを立て直せばよいですか?

A介護の体力面・精神面で無理がないか見直しを。介護している家族自身が疲れていると言葉がきつくなりやすいため、訪問介護やデイサービス、時にはショートステイの利用を検討するとよい。

Q介護をしている自分自身も高齢になってきて、この先が不安です。

A高齢者だけの生活では何かあったときの対応に限界があるため、近くに頼れる家族がいない場合は介護サービスを積極的に利用する。地域包括支援センターなどで相談できる。

Q症状が重くなってきて、自宅での介護に限界を感じています。

A足腰が弱って一人で歩けなくなったり、おむつ交換が頻繁になったりすると自宅介護が困難になる。無理をせず施設への入所も検討し、ケアマネジャーに相談して見学するとよい。ショートステイから利用して慣れていく方法もある。

監修:久場禎三(沖縄中央病院 院長・精神科医/ラジオ番組「こころの架け橋」パーソナリティ)