🎢 双極性障害
双極性障害について
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このページでわかること
双極性障害は、気分が沈む「うつ状態」と気分が高まる「躁状態」を繰り返す病気で、うつ病や統合失調症と間違われやすいという特徴があります。気分安定薬を中心とした薬物療法の継続と、規則正しい生活習慣が症状のコントロールに役立ちます。周囲の方の接し方についても、躁状態・うつ状態それぞれのポイントを紹介しています。
1. 双極性障害について
1-1. 双極性障害とはどんな病気?
双極性障害は「うつ状態」と「躁状態」を繰り返す病気で、うつ病とは異なり100人に1人ほどが経験します。
双極性障害は、従来は「躁うつ病」と呼ばれてきた疾患で、気分がひどく沈む「うつ状態」と、気分が病的に高まる「躁状態」が繰り返し現れる病気です。躁状態やうつ状態が治まっている時期には症状は特にみられず、日常生活も健康な人と変わらず送ることができます。
発症する年齢層は幅広く、10代から高齢期まで見られますが、平均すると30歳前後での発症が多いとされています。
うつ病は「うつ病相」という一つの極しかないため単極性うつ病とも呼ばれ、躁とうつの二つの極を持つ双極性障害とは異なる疾患とされています。うつ病は男性で10人に1人、女性で5人に1人ほどが一生のうちに経験するとされるのに対し、双極性障害は100人に1人程度と男女差はなく、うつ病ほど多くはありません。ただし、うつ病と思われていた方のおよそ10人に1人が最終的に双極性障害と診断されるとも言われており、多くの時期を「うつ状態」で過ごすため、うつ病だと思い込んでいる方も少なくありません。
1-2. 双極性障害のタイプ
躁状態の程度によって「重いタイプ」と「軽いタイプ」に分かれ、軽いタイプほど本人は病気だと気づきにくい傾向があります。
双極性障害の症状の現れ方には大きく2つのタイプがあります。うつ状態の程度はどちらも同じ程度です。
- 躁状態が重いタイプ:周囲から見ても明らかに「躁状態」とわかり、人間関係や仕事での大きなトラブル、大きな借金をしての買い物、計画性のない事業の立ち上げなどにつながることがあります。病状が悪い場合は入院が必要になることもあります。
- 躁状態が軽いタイプ:いわゆる「ハイな状態」で、高揚した気分が4日以上続きますが、周囲に迷惑をかけたり職を失ったりするほどではありません。本人は「いつもより調子がいい」「良いアイディアが次々浮かぶ」と感じ、病気の症状だとは思わないことが多いのが特徴です。ただし、1つのことに集中できず、次々といろいろなことに手を出して最後まで実行できない点が、通常のやる気がある状態とは異なります。
1-3. 躁状態・うつ状態の症状
躁状態では高揚感や活動性の高まりから人間関係のトラブルを招きやすく、うつ状態の症状はうつ病とほぼ同じです。
躁状態では、嬉しい出来事がないのに高揚感にあふれ、なんでもできる気がするようになります。気分の良さを通り越して興奮状態になったり、イライラして怒りっぽくなったりするため、人間関係でトラブルが起きやすくなります。
- 気分が変わりやすく、機嫌よく話していたと思ったら急に不機嫌になる
- 口数が増えて早口になる
- 自分が偉くなったと感じ、深夜・早朝に気にせず電話するようになる
- アイディアが次々浮かんで活動的になるが、気が散りやすく自分をコントロールできず、借金や人間関係の破綻につながることもある
- 多額の買い物をしたり、性的に活発になったりする
- 眠らなくても平気になり、本人は調子が良いと感じるため受診する人は少ない
うつ状態の症状は、うつ病のうつ状態とほぼ同じです。一日中気分が憂うつで、テレビや新聞にも興味が持てず何をしても楽しめない、食欲がなく体重が減る、夜眠れず過去のことを悔やんだり自分を責めたりする、すべてに関心がなくなり引きこもりがちになる、考えが進まず集中力や決断力がなくなる、動きや考えがゆっくりになる一方で落ち着かなくなることもある、といった症状がみられ、しまいには死ぬことを繰り返し考えるようになることもあります。うつ病と双極性障害を見分ける目安は、過去に躁状態があったかどうかです。
1-4. 双極性障害はまちがわれやすい病気
うつ状態のときはうつ病と、躁状態のときは統合失調症と間違われやすく、過去の躁エピソードの確認が診断の鍵になります。
双極性障害は、うつ病や統合失調症とまちがわれやすい病気です。「うつ状態」にあるときはうつ病と見分けがつきにくく、過去の躁エピソードを確認しなければ診断できません。うつ病であれば抗うつ薬が使われますが、双極性障害には抗うつ薬が有効ではないことも多く、正しい診断が重要です。
また、躁状態のときは興奮状態や誇大的な言動がみられるため、統合失調症とまちがわれることもあります。
うつ病の治療はうつ症状の改善を目指しますが、双極性障害の治療では気分の波そのものをいかに安定させるかが重視される点が異なります。病院を受診する際は、うつ病とまちがわれないためにも、過去に躁状態になったことがなかったか(軽い躁エピソードでもよい)よく思い出し、医師に伝えることが大切です。
1-5. 双極性障害の経過
治療をしなければ躁状態・うつ状態を繰り返しやすく、原因には脳内の神経伝達物質のバランスに加え遺伝的・環境的要因が関わっています。
治療を受けない場合、躁状態は急に始まって症状が悪化していき、2〜3ヶ月ほど続きます。うつ状態は6ヶ月ほど続くことも多く、年に4回ほど躁状態とうつ状態を繰り返す方もいます。経過の中で、全体の3分の1から2分の1程度の期間をうつ状態で過ごすとも言われています。
双極性障害は、治療をしなければ躁状態やうつ状態が一度きりで済むことはめったになく、一生のうちで何度もエピソードを繰り返すことが多い病気です。
双極性障害の原因は現時点でははっきりしていませんが、脳内で気分を調整する神経伝達物質のバランスが崩れていることがわかっており、遺伝的要因・環境要因・性格などが関連していると考えられています。原因となる遺伝子は特定されていませんが、遺伝のタイプによって薬の効き目や副作用に影響することがわかっています。環境面では、結婚・離婚・就職・離職・肉親の死・出産といったライフイベントが発症の引き金になることも少なくありません。
1-6. 治療について
気分安定薬を中心とした薬物療法の継続が再発予防の鍵となり、病気を受け止めて治療を続ける心構えが大切です。
双極性障害の再発予防に有効な薬は多数知られており、これらをうまく使うことでかなりの程度症状をコントロールすることができます。治療の目標は、再発を防ぐこと、躁状態をなるべく早く抑えること、うつ状態のつらさを緩和することです。
よく使われるのが気分安定薬で、気分の波を安定させる効果があり、うつ状態にも躁状態にも効果があります。非定型抗精神病薬もよく使用されています。症状が落ち着いてくると自己判断で服薬を中断してしまうことがありますが、双極性障害は一過性で終わることは少なく、治療の継続が非常に大切な病気であるため、服薬については必ず主治医と相談するようにしましょう。
双極性障害となったことをまず受け止めることが治療の出発点です。自分の状態を軽く見てしまったり、もう再発はしないだろうと考えてしまったりする方もいますが、病気についての理解を深め、内服を飲み続ける必要性を理解しておくことが、再発を防ぎながら普通の生活を送るために大切です。時には、躁状態のときの高揚した感覚を「調子が良い状態」の基準にしてしまい、それを目指してしまう方もいますが、その結果疲れてうつになってしまうこともあるため、躁でもうつでもない状態を治療の目標にすることが大切です。自分にとって何がストレスになるかを把握しておくことや、本人だけでなく家族も一緒に病気への理解を深めておくことも重要です。正しい知識があれば、悪化の要因を避けたり症状の変化に敏感になれたりするだけでなく、家族も適切なサポートができるようになります。双極性障害とつきあいながら業績を残した著名人も少なくなく、画家ゴッホ、作家ヘミングウェイ、作曲家ベートーベン、政治家チャーチルなどが知られています。
1-7. 日常生活の過ごし方
起床・就寝・食事などの時間を規則正しく保ち、睡眠を安定させる生活習慣が症状の安定化に役立ちます。
双極性障害は、日常生活を規則正しくすることで症状が安定しやすくなることが知られています。起きる時間、寝る時間、薬を飲む時間、食事の時間、活動する時間などを一定に保ち、こうした活動と気分を表に記入して記録すると、病状の把握にも役立ちます(「睡眠覚醒リズム表」で検索するとインターネットで記録表が入手できます)。
特に睡眠の安定は重要で、次のような習慣が有効です。
- 休日も含めて毎日決まった時間に起床する
- 日中に適度に体を動かす
- 夕方以降はカフェインなどの刺激物をとらない
- 寝る前は穏やかに過ごし、パソコンやスマートフォンを使わない
- 寝る前にアルコールをとらない
- ベッドの中でテレビを見たりスマートフォンをいじったりしない
1-8. 周囲の人の接し方
躁状態では言動に振り回されず懸念を冷静に伝え、うつ状態では無理をさせず安心させる声かけを心がけます。
家族からすると躁状態は困った状態だと感じやすく、うつ状態は軽く見てしまう傾向がある一方、本人はうつ状態のつらさを強く訴えつつ、躁状態は軽く考えがちです。そのため、家族と本人で受け止め方が食い違うことが少なくありません。
躁状態のときは、本人は気分がよく何でもできると感じているため、そうした言動に振り回されず、刺激するようなことは言わないようにします。躁状態になっているのではないかという懸念は冷静に伝え、コロコロ変わる気分を利用して話をそらすことも一つの方法です。浪費が止まらず大きな借金や社会的信用を失うリスクがあるときは、司法書士や弁護士への相談、入院も検討します。うつ状態のときは、無理をさせずに休息をとれるようにし、安心させる言葉かけを心がけます。「頑張って」といった叱咤激励は避け、本人のつらい気持ちを理解する姿勢が大切です。重要な決定は、躁状態・うつ状態いずれのときも避けるようにしましょう。症状をコントロールできれば、社会復帰も十分可能です。
出典・参考文献
「「双極性障害」ってどんな病気?」
「患者さんと家族のための双極性障害(躁うつ病)の手引き」
「対人関係療法でなおす 双極性障害 -躁うつ病への対人関係・社会リズム法-」
「双極性障害(躁うつ病)と付き合うために」