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適応障害・ひきこもりについて
適応障害・ひきこもりに関する記事(全2本)を1ページにまとめました。目次から気になる項目へジャンプできます。
このページでわかること
ストレスにうまく適応できないことで生じる心因性の疾患「適応障害」と、社会参加を避け自宅にとどまり続ける状態像である「ひきこもり」について、それぞれ独立したテーマとして扱います。適応障害は原因・症状・治療法や日常生活での工夫を、ひきこもりは最新の実態調査データや原因・症状、家族の関わり方や相談先までをまとめています。
1. 適応障害について
1-1. 適応障害とは
適応障害は、就職や進学、結婚や離婚などのストレスにうまく適応できないことで生じる心因性の精神疾患です。
適応障害は、日常的なできごとがストレスとなって発症するこころの病気で、心因性の精神疾患です。こころの病気の原因は大きく3つに分けられます。心因は、ストレスや悩み、不安、恐怖など心の状態や環境的な原因によって発症するもので本人の性格も影響し、適応障害はここに含まれます。
内因は、体質や気質といった本人が生まれ持った特性が発症に関わるタイプで、統合失調症や躁うつ病などが該当します。遺伝がどう影響しているのかについては、今なお研究が続いている段階です。外因は、事故や病気の影響が脳に及ぶことで心の症状として現れるタイプで、アルコールや薬物の使用がきっかけとなるケースもここに含まれます。
適応障害は、就職、進学、結婚や離婚などのストレスに適応できずに生じてしまう病気で、そのため会社や学校、家庭など社会生活に支障が出ます。環境の変化にうまく適応できなくても日常生活はなんとか送ることができる人は多くいる一方、本人が環境の変化に苦痛を感じていて健康な生活ができないのであれば病気の範疇に入ります。適応障害は、いわば病気と健康の境目にある状態といえます。
1-2. 適応障害の特徴と症状
症状そのものより「原因となるストレスがはっきりしていること」と「回復期間の目安」が大きな特徴で、症状は6つのタイプに分けられます。
症状は様々で、原因と回復期間が特徴です。適応障害では、心や体、行動面に様々な症状が出現し、適応障害に特有の症状はありません。最も大きな特徴としては、症状の原因となったストレスがはっきりしていることで、診断基準にも、適応障害は原因ストレスから3ヶ月以内に発症するとされています。
ストレスが取り除かれれば速やかに軽快し、症状が収まるまで6ヶ月を超えないことも特徴ですが、原因となるストレスが続く場合は慢性化することもあります。
症状は次の6つのタイプに分けられます。
- 抑うつ気分タイプ:気分の落ち込みが中心となる
- 不安タイプ:強い不安感が中心となる
- 不安・抑うつ混合タイプ:不安と気分の落ち込みが同時に現れる
- 素行の異常を伴うタイプ:社会のルールを逸脱する行動が出る
- 情緒と素行の異常が混合するタイプ:子どもに多く、情緒の不安定さと問題行動が同時にみられる
- 特定不能のタイプ:体の不調やひきこもりなど、生活面への影響として現れる
1-3. 適応障害でみられる具体的な症状
抑うつや不安を中心に、素行の乱れや依存、身体の不調まで、さまざまな症状が現れます。
抑うつは、適応障害の症状としてほとんどの患者さんが訴えるもので、うつ病ほど重くはないことが多いです。原因となるストレスから3ヶ月以内に気分が落ち込み、仕事が手につかないなどの支障が出ます。適応障害は発症の原因となったストレスがはっきりわかりますが、それが解決できないものの場合、何度も思い出して次第に本格的なうつ病になることもあります。
不安は、ストレスとなった出来事や人間関係について不安や心配でいっぱいになり、夕方から夜間にかけて不安が大きくなることが多いです。適応障害がうつ病と違う点は、ストレス因子がないところではなんとか普通に過ごせるという気分の不安定さです。
素行の障害としては、まれに法律に触れるような行動を起こすこともあり、本人としては投げやり感、焦燥感、怒りなど自暴自棄な行動をとることもあります。ストレスを紛らわすため薬物やアルコール、インターネットの世界に依存することもありますが、良い解決方法ではありません。身体愁訴として、ストレスは心の症状だけでなく、肩こり、不眠といった体の症状も引き起こし、体調不良があるとますます出社困難となり悪循環に陥ります。
1-4. 適応障害の原因となるストレスと病態
ストレスは脳内の扁桃体や自律神経の働きを通じて心身の反応を引き起こし、喪失体験を含むさまざまな出来事が原因となりえます。
適応障害の原因はストレスですが、ストレスは誰にでもあるもので、生きていく上で必要なものともいえます。ストレスがあってもなんとなく解消されていたり、自力で乗り越えたり対処したりとそれぞれで、ストレスによってこころに影響が及び支障をきたした病気が適応障害です。
ストレスが脳内の扁桃体という不安を司る部分を活性化させ、視床下部へ働き交感神経が緊張します。副腎が刺激されアドレナリンが分泌されると心拍数が増えドキドキするなど体の反応が起こります。アドレナリンは青斑核を活性化させノルアドレナリンを放出し、覚醒レベルが上がり不眠となったり不安症状が出現したりします。
ストレスとなることは重大事件ばかりではなく、毎朝の通勤、夏の暑さ、冬の寒さ、町の騒音などもストレスとなります。他にも対人関係(家族、友人、職場)、環境(住居の不安定、経済、医療福祉)、心理的なストレス(親しい人との死別、独居、生活の変化)が原因となりえます。結婚や妊娠出産、就職、昇進、定年退職など、一般的によいとされていることもストレスとなりえます。
ほとんどのストレスと折り合いをつけている人でも、自分の命に関わる病気の判明や、家族との死別のような喪失体験は簡単に受け入れることができず、それらをきっかけに適応障害となる人も多いです。ストレスの大きさを調べた調査では、大きい順に、配偶者の死、離婚、家族の死、自分の怪我や病気、失業、家族の健康上の変化、親密な友人の死、就職・卒業、上司とのトラブルとなっています。大切なものを失う「喪失体験」は適応障害の原因ストレスとなります。
1-5. 適応障害になりやすい人の特徴
同じストレスでも発症する人としない人がおり、几帳面で頑張りすぎる人や他人の評価を気にしすぎる人がなりやすい傾向があります。
ストレスによって適応障害は発症しますが、ストレスに耐える力、乗り越える力は人によって異なるため、同じストレスでも発症する人としない人がいます。ストレスがあった時に、適応障害の人に多い考えとして「自分には関係ないと考えないようにする」という答えが多く、一方で適応障害の人に少ないのは「これも経験だと思い、慎重に計画を立てて問題を解決しようとする」傾向です。
几帳面で頑張りすぎる人や、他人からの評価が気になり、何か言われると過剰に気にしたり、自分を抑えて相手に合わせすぎる人もなりやすいです。
1-6. 適応障害の治療
治療は精神療法と薬物療法の2本柱で行われ、ストレスの受け止め方を変えていくことが回復の鍵になります。
診断や治療は、精神科や心療内科で行われます。受診し、問診でいつからどのような症状か、きっかけ、いつ症状が起こるか、以前との違い、自分の性格、これまでの病気、仕事内容、職場環境、家族、ライフイベントなどをしっかり話すとよいでしょう。
話す自信がない人はメモを見ながらでよいでしょう。医師から診断を受けたら治療を行います。治療は2本柱で、精神療法と薬物療法です。精神療法は医師と原因のストレスを突き止めたり、解決するための行動を起こします。解決できないストレスであれば、受け止め方を変えることで気持ちを楽にしていきます。薬物療法は、抑うつ、不安を軽減したり、不眠の改善や気持ちの安定を図ります。
薬物療法では、不安、抑うつを軽減させる薬として抗うつ薬を使用します。不眠があれば睡眠剤も使用し、気分を安定させるため気分安定薬や抗精神病薬を併用することもあります。カウンセリングでは、自信と勇気をつける支持療法を受けることが多いです。抑うつになっていると、自分を責め、自尊心が低下し冷静にみられなくなっています。医療者は話に耳を傾け、受け入れ、理解し、共感することで、患者さんが自らの根底にあるものに気づき変化していくのを待ちます。
1-7. 日常生活の中で自分でできる具体的な方法
規則正しい生活リズムや日光を浴びる習慣、活動と休養のメリハリなど、日常生活の工夫が治療と同じくらい大切です。
病院での治療と同じくらい大事なのは日常生活の過ごし方です。朝起きる、夜寝る、食事するなどの時間をずらさずに規則正しく生活すること、適度に体を動かすようにすることが重要なポイントで、朝起きたあとに太陽の光を浴びることで体内時計をリセットして夜を眠りやすくします。
活動と休養のメリハリをつけることも必要で、疲れやすい症状は出ますが、日中は散歩したり体操したりと軽く運動する、掃除をすることもよいでしょう。
お菓子の食べすぎには注意しましょう。適応障害になり自宅療養していると甘いものが食べたくなる人も多いですが、お菓子を食べすぎて栄養のバランスを崩す場合があるため、食べることでのストレス発散はしないほうがよいでしょう。昼寝をするなら、睡眠に影響の出ないよう20〜30分程度に留め、遅くても15時までにはすませ、それ以降には昼寝しないようにしましょう。寝る前にテレビやスマホの明るい光を浴びると、脳が覚醒してしまい睡眠覚醒リズムが崩れてしまうため、寝る前には明るい光を浴びないようにして、リラックスできるよう入浴後にストレッチなどを行うようにしましょう。
1-8. 周囲の人の対応
励ますよりも休ませることを優先し、本人を傷つけやすい言葉を避けることが周囲にできる支えになります。
励ますよりも休ませることを優先させましょう。抑うつの症状がある人には心の休養が必要で、本人は「休んでなどいられない」と罪悪感を持つことが多いですが、休養するほうが回復は早いです。適応障害は、原因となるストレスさえなければ回復できる病気であり、軽い抑うつ程度の段階で休養することで重症化せずにすみます。
周囲の人は激励や忠告よりも、休養することでエネルギーを回復させることが大切だと勧めるようにしましょう。ただし、休ませるのは「心」=つまり「他人に気を使う」ことを休むのであり、体は適度に動かす必要があります。
周囲の人は心配からの言動でも、本人を傷つける言葉があることに注意しましょう。本人の気持ちを軽んじるような発言や、根性論で片づけるような励まし、気分転換だけを勧める助言、服薬そのものを疑問視するような発言は、本人を傷つけかねないため避けましょう。職場でのケアとしては、休職・復職時には職場と病院で連携することも有効です。
1-9. 回復に向けて
適応障害は比較的治りやすい病気で、多くの人が回復していきますが、経過を見守りながら悲しみや自責の念に向き合うことも大切です。
回復は新しい自分のスタートであり、薬物療法で症状を抑えながら精神療法を続けるうちに、ほとんどの人は回復していきます。適応障害になったことは一時的な寄り道と考え、この経験を生かす道を考えるとよいでしょう。
適応障害は比較的治りやすい病気で、患者さんの5年後の状況をみると多くの人が治癒しています。だが、適応障害が重症化したり、ストレスを乗り越えられなかったりして、他の病気を発症する人も少なくありません。特に青年では、うつ病や薬物乱用など他の病気へ移行することもみられるため、経過を見ることが大切です。対処力を上げるため、健康的にストレスを解消する方法も探しておくとよいでしょう。
大切な人やものを失ったときの悲しみは、心の中に押し込めてしまうと、かえって負担が大きくなるといわれています。涙を流す、誰かに話す、思いを書き出すなど、感情を外に表していくことが回復への近道です。このプロセスは「喪の作業」(mourning work、グリーフワークとも呼ばれます)と呼ばれ、喪失体験を乗り越えるうえで欠かせないステップとされています。適応障害は、病気ではあるがその人の特性と環境の相互作用がうまくいかないことによるものであり、必要なのは病気を治そうとすることでなく、その人の特性と環境がうまく調和するよう働きかけることです。自責の念から脱却し、主体的にポジティブなことや自分のよいところに目を向けていくことも大切です。
出典・参考文献
「新版 適応障害のことがよくわかる本」
「ストレスと適応障害 つらい時期を乗り越える技術」
2. ひきこもりについて
2-1. ひきこもりとは
ひきこもりは、様々な原因で社会参加を避け6ヶ月以上自宅にとどまり続ける状態で、内閣府の最新調査では全世代で約146万人と推計されています。
ひきこもりとは、様々な原因で社会参加を避け、原則的に6ヶ月以上にわたって自宅にとどまり続けている状態のことをいいます(ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン)。内閣府が2023年3月に公表した2022年度調査『こども・若者の意識と生活に関する調査』では、15〜39歳で2.05%、40〜64歳で2.02%が該当し、全国で約146万人と推計されています。
2019年の前回調査(推計約115万人)から約31万人増加しており、コロナ禍が主要因の一つとされ、ひきこもり始めた理由として新型コロナウイルスの流行を挙げた人はおよそ5人に1人にのぼります。これまで「若者問題」と思われていたひきこもりが、全世代の問題となりつつあることが改めて示された結果といえます。
このひきこもりの高齢化のことは8050問題と表現され、80代の親が50代のひきこもりの子の世話をしている家庭を意味しており、こうした状況がまれなものではなくなりつつあります。高齢化している理由としては、ひきこもりの長期化と発生年齢の上昇(平均21.2歳)が指摘されています。そして親亡き後という問題が現在浮上しており、福祉の負担も予想されています。
2-2. ひきこもりの原因やよくみられる症状
ひきこもりは診断名ではなく状態を表す言葉で、原因は多様であり、対人恐怖や不眠、抑うつなどの症状がみられます。
ひきこもりとは、診断名ではなく、不登校や就労での挫折をきっかけに長期間自宅にとどまり続ける人の状態を指す言葉です。「ひきこもり」そのものが必ずしも治療の対象になるわけではありませんが、背景に未治療の統合失調症や発達障害が隠れている場合や、長期化する中で二次的に精神的な不調が生じてくる場合には、専門的な支援が必要になります。
きっかけとなる出来事はさまざまで、成績不振や受験の失敗、いじめといった挫折体験を伴うことが多い一方、はっきりした理由が見当たらないケースも珍しくありません。内向的、非社交的、あるいは「手のかからない良い子」だったといった性格傾向が語られることもありますが、これだけで説明できるものではなく、どんな家庭のどんな子どもにも起こりうるものと考えるべきでしょう。
よくみられる症状としては、対人恐怖的な訴え、被害関係念慮、強迫症状、不眠、抑うつ気分、希死念慮、家庭内暴力、摂食障害などが挙げられます。多くの事例で昼夜逆転の生活リズムがみられ、日中に家族と顔を合わせることへの気まずさが、この昼夜逆転をさらに長引かせる一因になっているとも考えられています。
2-3. 不登校との関連
不登校児童生徒数は過去最多の水準が続いており、ひきこもり事例の多くが不登校の経験を伴うことが報告されています。
文部科学省の調査(令和4年度)によると、小中学校における不登校児童生徒数は約29万9千人、高等学校における不登校生徒数は約6万人と、いずれも過去最多の水準となっています。社会的ひきこもりに関する調査を行っている斎藤環氏の報告によると、ひきこもり状態に入っていくきっかけとして不登校が最も多いとされ、ひきこもり事例の90%が不登校を経験しており、そのうち86%は3ヶ月以上にわたる持続的な不登校だったと報告されています。
しかし、不登校全体数からみるとひきこもり状態に至る事例は10%弱の比率とされており、それほど多くないようです。不登校だからといって必ず治療が必要というわけではありませんが、将来ひきこもり事例に発展しないか経過を注意深く見る必要があります。現在、文科省では不登校対策としてスクールカウンセラーの配置を進めて相談しやすい体制を構築していると報告されています。また、不登校となっても、大学検定などを受けて進学することを選択できる子もいるため、すべての不登校が病気というわけではありません。未治療の統合失調症や発達障害が潜在している場合や、長期間に及ぶひきこもり状態が二次的に精神障害を起こす場合に治療が必要となります。
2-4. ひきこもりにみられることの多い具体的な症状
対人恐怖や強迫症状、不眠と昼夜逆転は、ひきこもり状態でよくみられる代表的な症状です。
もっとも多く見られる精神症状の一つに「対人恐怖症状」があります。限られた相手や状況では対人困難を感じずにふるまうことができる人も少なくありません。ただしひきこもり状況が長引くほど対人関係は乏しくなる傾向があり、ある調査では友人と呼べる相手が一人以下という人が4割強(41%)にのぼる一方、頻繁に連絡を取り合うような親密な友人関係を持つ人は2割強(23%)にとどまったと報告されています。
強迫症状は、無意味な行為や無意味な考えへの強いこだわりと反復した確認行為のことで、鍵が閉まっているか何度も確認し、わかっていても再度確認を繰り返す、本やノートの角をきちんと揃えないと気がすまないなど、行き過ぎた几帳面といったイメージです。ひどくなると確認に何時間も費やして何もできなくなることもあります。
不眠と昼夜逆転は、ひきこもり事例のほとんどに見られるもので、不眠のために一時的にでも睡眠薬に頼った経験がある人は7割近く(68%)、昼夜が逆転した生活リズムがみられた人は8割超(81%)にのぼるとの報告もあります。ひきこもり生活では日中も自室で過ごすため体内時計の周期が乱れ、昼夜逆転が出現すると考えられています。また本人は出たくても出られないという劣等感から、日中みなが活発に動いている時間帯に罪悪感を感じるため、昼夜逆転傾向に拍車がかかるとも考えられています。
2-5. ひきこもりにみられることの多い具体的な症状2
家庭内で家族を避ける、退行、家庭内暴力、被害関係念慮、抑うつなど、家庭内での様子にも特徴的な症状が現れます。
家庭内でのひきこもりとして、外に出ないだけでなく、自宅内でも家族を避けて生活することが多く、ほとんど自室から一歩も出ないというケースも多いです。家族との話し相手が限られているか、まったく会話がない事例は60%との報告があります。
退行、いわゆる「子ども返り」として攻撃的態度と依存的態度が交互に現れることがあり、退行がひどくなると家庭内暴力に発展することがあります。家族に対して何らかの形で攻撃的な態度を示す例は、一時的なものを合わせると6割超(62%)にのぼり、いわゆる家庭内暴力についても一過性のものを含めると5割強(51%)の事例で認められたとの報告があります。時には親に対して今の自分がこんな状態なのは親のせいだと恨みを持つケースもあります。
被害関係念慮として、ひきこもりが長期間続くと、時折「近所の人が自分の噂をしている」「子どもたちが通りすがりに自分の悪口を言っている気がした」と被害関係念慮を持つことがあり、この場合は幻聴や妄想の存在など統合失調症の可能性もあるため医学的な評価が必要です。抑うつも気分の落ち込みとしてしばしばみられ、気分の波が慢性的に激しい状態が約3割(31%)、軽度のうつ状態にあるケースが約6割(59%)を占めていたとする報告もあります。絶望感や希死念慮、罪責感といった感情についても、軽度のものは5割強(53%)が経験していたとされ、周囲の人が思う以上に社会参加できない焦りや絶望感を抱えていることがうかがえます。ふと自殺を考えたり、自傷や自殺未遂を起こしてしまう事例もあり支援が必要です。
2-6. さまざまな精神疾患に伴うひきこもり
統合失調症や自閉スペクトラム症、うつ病など、ひきこもり状態の背景に精神疾患が潜んでいる場合があります。
ひきこもりには精神疾患に伴うものと、精神疾患が原因でないものがあります。ひきこもりを起こしうる精神疾患としては次のようなものが挙げられます。
- 統合失調症:幻覚や妄想をもち意欲低下、無為自閉などによりひきこもり状態となる。幻覚妄想が出現する発症前に意欲低下、自閉などの症状が先に出現しひきこもり状態となることがある
- 自閉スペクトラム症:会話など言語コミュニケーションが幼少期より不得手であり、対人スキルの乏しさから同年代の中で自分をうまく言葉で表現できず不適応になりやすい。学校や社会生活がうまくいかずひきこもり状態となる場合があり、二次障害としてうつや対人恐怖を併発しやすい
- うつ病:うつ症状によって意欲低下、長期にわたる外出困難が起こりうる
- 社交不安障害:重度の対人恐怖を抱える場合、外出困難となる
- 思春期妄想症:思春期に発症する視線恐怖、自己臭妄想などを気に病みひきこもり状態となることがある
2-7. ひきこもりとどう向き合うか
叱咤激励は逆効果になりやすく、本人の理由を尋ね、他者からの承認を得られる関わりを探すことが大切です。
周囲はひきこもり状態を否定し、叱咤激励はしがちです。「お説教」「議論」をして「甘えている」「怠けている」という感覚を本人に強く主張してしまう人がいますが、その方法では失敗する可能性が高いです。一方的に抑え込むことや、過度に感情的となって本人の意見を封じてしまうと、その体験が本人にとっての外傷体験となり悪循環に陥ります。
しかし叱咤激励が無効となったからといって、何でも受容すればいいというわけではなく、お金、暴力といったことにはルールが必要です。
子どもが社会を避けてひきこもり始めたら、まずはその理由を尋ねてみましょう。じっくりと本人の語る理由を聞いた上で、じっくりと説得を試みることで、本人がどのようなことを悩んでいたのか明らかにされる場合があります。ひきこもりの当事者の多くは、「生活のために働く」という動機付けをうまく実感できない傾向があり、それよりも「認めてもらえた」という他者からの承認のほうが、動き出すきっかけとして働きやすいといわれています。その上で、治療が必要な症状があれば医療機関の受診も検討し、福祉の専門家や当事者など他者との出会いの場を探していくことが重要です。
2-8. 日常生活の中で家族が心がけること
まずは挨拶程度の声かけから始め、話題やお小遣いの決め方など、日常のコミュニケーションを工夫することが助けになります。
まずは声かけから始めましょう。ほとんどの事例で家族との会話がきわめて乏しくなっているとされ、長期間口をきいていないケースもありますが、まずは挨拶程度の声かけを交わしましょう。会話で大切なのは一方通行の説教や説得ではなく、言葉のキャッチボールです。
将来のことや進学・就職、同世代の友人の話題など、本人が引け目やコンプレックスを感じやすい話題は避け、逆に時事的なニュースや社会的な出来事、本人から距離のある話題であれば、比較的反応が得やすいとされています。社会情勢やニュースには関心を持っているケースも少なくないため、本人に何か趣味があれば、それについていろいろ尋ねてみるとよいでしょう。
金銭に関しては、お小遣いを渡す場合は金額を一定にすることが基本です。「欲しいときにだけ」というあいまいな渡し方では、かえって浪費につながったり、逆に何も求めなくなってしまったりすることがあるため、金額をあらかじめ決めておくとよいでしょう。家庭内暴力に至るケースもありますが、その場合は暴力の拒否という立場をとり、対決するのではなく警察など他者の介入を依頼したり、家族が一時的に避難することも重要な選択肢になります。
2-9. 相談・治療・社会復帰
沖縄県ひきこもり専門支援センターなどの相談窓口を活用し、症状に応じて医療機関の受診や社会復帰施設の利用を検討します。
沖縄県には「沖縄県ひきこもり専門支援センター」という相談窓口があり、家族が相談したい場合はここに連絡するとよいでしょう。受診につながりやすい症状として、家庭内暴力とともによく家族を困らせる症状に、頻回な確認行為=強迫症状があります。
本人が納得するまで何度も戸締まりや手洗い、ガスの元栓確認などを行い、ひどい場合は家族に確認を強要しますが、その場合は精神科治療を優先させるとよいでしょう。強迫以外にもうつや不眠、被害妄想、対人恐怖などを本人が相談したい症状があれば精神科受診を勧めるとよいでしょう。
社会復帰のルートとしては、医療機関で診断がつけば福祉を利用しての外出支援や社会復帰施設への通所などをゆっくり勧めるとよいでしょう。対応がある程度成功し、家庭内コミュニケーションが深まった段階で、外での活動を本人がチャレンジしたい場合は家族も居場所探しを手伝うとよいでしょう。例えばパソコン教室、自動車教習所、ごく軽いアルバイトなど、それらの活動がハードル高い場合には病院デイケアや地域活動センターなど負荷のかからない活動が最初はよいでしょう。
2-10. 家庭内暴力への対応の基本方針
暴力が深刻な場合は治療者と相談の上で一時的に避難し、定期的な連絡を保ちながら本人が落ち着くのを待つ対応が取られます。
家庭内暴力への対応では、あらかじめ治療者と両親の間で避難の方針をすり合わせておくことが土台になります。目安としては、大きな暴力をきっかけに両親が家を出る場合、その日のうちに避難を終え、同じ日のうちに本人へ連絡を入れます。
連絡の際は、これから定期的に連絡すること、生活の心配は要らないこと、暴力が完全におさまるまでは戻らないことを、落ち着いて伝えます。
その後は決まった間隔で連絡を取り続けますが、話す時間は短く区切り、時間が来たら会話の途中でも終えるようにします。本人の様子が落ち着いてきたタイミングを見て、一時的な帰宅や外泊を少しずつ重ねていきます。外泊の際に暴力がなく、穏やかに会話できる状態が続くようであれば、そこで本格的な帰宅に踏み切ります。
このプロセスを通じて親の側に求められるのは、暴力や脅しに動じず、誠実で毅然とした姿勢を保ち続けることです。帰宅までにかかる期間には個人差が大きく、短ければ1ヶ月ほど、長くても半年程度を目安に考えておくとよいでしょう。
出典・参考文献
「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」
「ひきこもり支援者読本」
「改訂版 社会的ひきこもり」
「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」
「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(令和4年度)」
「ひきこもりの心理状態への理解と対応」